職域における勤労者の主観的咀嚼状態と食習慣の関連性

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タイトル別名
  • Association between subjective chewing conditions and dietary habits in Japanese workers
  • ショクイキ ニ オケル キンロウシャ ノ シュカンテキ ソシャク ジョウタイ ト ショク シュウカン ノ カンレンセイ

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抄録

<p>目的:高齢者を対象とした先行研究では,咀嚼能力が低下することで食物繊維が豊富な食品や硬い食品を避け,柔らかい食品を摂取しやすくなることが報告されている.しかしながら,勤労者を対象とした咀嚼状態と食習慣に関するエビデンスは乏しい.従って,我々は勤労者の咀嚼状態と食習慣の関連性を明らかにするために歯科を含む健康診断(以下,健康診断)の結果を分析した.対象と方法:2018年4月から2019年3月までに健康診断を受診し,データに欠損がない18歳以上65歳未満の6,703名(45.6 ± 10.2歳)の勤労者を分析対象とした.特定健康診査の標準的な質問票における咀嚼状態の項目に対する回答に応じて,対象者を咀嚼状態良好または咀嚼状態不良に分類した.健康診断問診票の食習慣に関する質問への回答を目的変数とし,咀嚼状態を説明変数として,性別,年齢,現在歯数,歯周ポケットの深さ,口腔清掃状態,Body Mass Index,喫煙習慣,飲酒習慣,運動習慣,現病歴の有無,行動変容ステージで調整したロジスティック回帰分析を行った.また,性別と年代(40歳未満と以上)で層別化して同様のフレームワークを用いたサブグループ解析を行った.結果:食習慣の18項目のうち,「栄養のバランスを考えている」,「緑黄色野菜をよく食べる」,「ゆっくりよくかんで食べる」,「海藻類や小魚をよく食べる」,「食事を1日3回ほぼ決まった時間に食べる」,「朝食をほぼ毎日とる」,「毎食,たんぱく質食品を食べる」,「乳製品(牛乳,ヨーグルト,チーズ)をよく食べる」,「食事は就寝2時間前までに終わらせる」において咀嚼状態不良と有意な負の関連を認めた(p < .05).また,「ジュース・缶コーヒーを1日平均2本(2杯)以上飲む」,「こってりした肉料理をよく食べる」,「フライやトンカツなど油で揚げたものをよく食べる」,「インスタント食品や加工食品をよく食べる」,「洋・和菓子,スナック菓子を平均して1日2種類(個)以上食べる」,「塩辛いものをよく食べる」,「間食,夜食が習慣になっている」において咀嚼状態不良と有意な正の関連が認められた(p < .05).サブグループ解析の結果,40歳未満,以上の男女においても,得られた効果量の方向性はほぼ同様の傾向であった.考察と結論:本研究の結果,咀嚼状態が不良である者は年齢,性別にかかわらず望ましくない食習慣を有している可能性が示唆された.従って,職域歯科健診の拡大と,職域における全ての勤労者を対象とした歯科保健指導を含む保健指導の推進が必要であると考えられる.</p>

収録刊行物

  • 産業衛生学雑誌

    産業衛生学雑誌 65 (4), 192-202, 2023-07-20

    公益社団法人 日本産業衛生学会

被引用文献 (1)*注記

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参考文献 (15)*注記

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