観測データの乏しい流域での利用に向けた統計的補正手法を適用した長期的河川流況評価

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タイトル別名
  • Long-term assessment of river flow regime by applying statistical correction method in data scarce basin

説明

<p>気候変動の影響評価研究を行う際,将来予測データとして大気大循環モデル(GCMs)の出力値が利用されるが,観測値との間にバイアスが存在する.このバイアスを高精度に補正するためには,過去長期間の水文気象観測データ(約20年以上)を用いて補正を行う必要がある.しかし,世界には発展途上国など,観測データが乏しい流域が数多く存在し,このバイアスの補正が困難な場合も存在する.そのような流域では一般的に,データ同化の適用により得られる再解析データが利用される.ただし,再解析データも全球を対象としているため空間解像度が粗く,観測値との間にバイアスが存在する.そこで本研究では,再解析データの統計的補正手法を構築することで長期間の観測値に準ずるデータを作成し,それらのデータを基に立野ダム流域の過去の河川流況の再現精度を検証した.なお,立野ダムは現在建設中のダムであり,流入量や放流量に関する長期間のデータが存在しない.そのため,観測雨量を基に算出したダムの流入量・放流量を真値として補正した再解析データの精度を検証し,本手法の河川計画への有用性を検証した.本研究では,観測データの乏しい流域でも利用可能な再解析データとしてERA5(時間解像度:hourly)を使用し,2001年から2020年を較正期間として観測値とERA5の統計的関係から補正手法を構築した.そして,観測値が存在する1989年から2020年の気温と降水量の補正データを作成し,流況評価を行った.立野ダム流域の流域平均雨量・流域平均気温は流域内の観測地点を基にティーセン分割を行うことで算出し,3段タンクモデルの適用により河川への流入量を算出した.また,立野ダムの放流規則に則りダムモデルを作成し,ダムへの流入量を基に毎時間放流量を算出した.その結果,補正前後で河川流況曲線を比較すると,補正前のERA5は観測値に基づく流量を大きく過大評価する傾向にあったのに対し,補正後のデータは観測値を良好に再現出来ていることが確認された.さらに,ダムの放流量の分布を表すヒストグラムを比較すると,補正データは観測値に基づく放流量の分布と概ね一致していることが示された.以上の結果から,本研究で構築した統計的補正手法を適用することで観測データが乏しい流域においても河川流況評価に必要な長期間の観測値に準ずるデータを高精度に作成出来ることが示された.</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390017193115740416
  • DOI
    10.11520/jshwr.36.0_304
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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