衛星データを用いたため池における水草繁茂域の推定に向けた基礎的検討

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  • A fundamental study for estimation of a thriving area of aquatic macrophytes in agricultural ponds using satellite data

抄録

<p>近年の地球温暖化を背景として,緩和策として二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスの排出量削減に加え,温室効果ガス吸収源の保全及び強化を行うことが課題となっている.その中で近年,藻場・浅場等の海洋生態系によって吸収されたCO2が有機体として海底土壌・深海に蓄積することで吸収・貯留される炭素量(ブルーカーボン)が注目されており,海洋生態系における吸収作用の保全や強化が重要視されている. </p><p>一方,湖沼やため池などの淡水域において貯留される炭素量も無視できない量存在すると推定されており,その一つとして,ため池に多く生息する水草による炭素貯留量を解明することが重要となる.しかし,ため池における水草の繁茂状況や,水草の繁茂するため池の分布,特性などに関するデータは乏しい.そこで本研究では,ため池における水草繁茂状況を簡便に把握する手法を開発するための基礎的検討として,人工衛星Sentinel-2を用いたため池における水草有無の推定手法の検討を行った. </p><p>本研究では,ため池が多く存在する佐賀県武雄市,愛媛県西条市,広島県東広島市で現地調査を行った合計35箇所のため池を研究対象とし,水草有無の目視観測結果とSentinel-2から得られた推定結果を比較し,人工衛星データの水草有無に対する有用性を検討した.まず,近赤外反射率データを用いて水域を抽出した.次に,抽出した水域において,ある閾値以上のNDVI値が存在した場合を水草あり,それ以外のため池を水草なしと判断し,現地観測結果と比較した. </p><p>各対象地域の合計35箇所のため池の内,30箇所のため池が水域として抽出されていた.水域面積が比較的小さいため池は抽出されておらず,今後は解像度の高い衛星データを用いた検討を行い,より高精度に水域を抽出することが重要となる.また,水域として抽出された30箇所のため池において,22箇所で水草の有無が正しく判断されており,衛星データから水草の繁茂を概ね推定することが出来た.ただし,ため池周辺の森林やため池内に繁茂する藻類などによる誤判定が確認されたことから,今後は衛星データに対する周辺環境の影響の除去方法に関する検討や衛星データからクロロフィル濃度を推定する手法の検討を行うことで,より精度の高い水草有無の推定手法の開発を行っていく.</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390017193115834752
  • DOI
    10.11520/jshwr.36.0_300
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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