診療参加型臨床実習による2対1モデルでの臨床実習教育の経験で得られた臨床教育者の役割と今後の課題

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タイトル別名
  • O-104 教育・管理運営①

抄録

<p>【はじめに】 当院では従来型の臨床実習から診療参加型臨床実習による臨床実習教育へと移行してきた。今回、学生2人に対し実習指導者1名を配置した2対1モデルでの臨床実習教育を経験し、それによって得られた臨床教育者(以下、CE)の役割と今後の課題について報告する。</p><p>【方法】 学生は女性2名、CEは臨床経験13年目であり、2対1モデルの教育期間は8週間であった。教育方法は診療参加型臨床実習の正統的周辺参加と認知的徒弟性に基づき、周辺業務から部分的に診療参加させ、見学-協同参加-実施の段階を踏みながら指導を行った。臨床実習前に患者情報やCEの臨床思考を各週毎にどこまで開示するかを準備した。臨床実習がスタートしてからは、見学−協同参加やディスカッションを通して、学生の個性や運動・認知・社会スキル、各学生の知識量を把握し、徐々に患者と接する機会を増やしていった。運動スキルの協同参加場面では、模倣している学生へ指導しながら、もう一方の学生に見学させ、注意点や修正点がないか確認を促し、それを交代しながら実施した。認知スキルの指導場面では、CEの臨床思考を解説から始めてディスカッションを重ねた。また、学生同士でのディスカションを促し、時にはCEと1対1の場面を設け確認を行った。</p><p> また、当院の診療参加型臨床実習を担当している理学療法士9名に2対1モデルについてアンケート調査を行った。</p><p>【結果】 臨床実習終了時には、ルーブリック評価にて学生2人の成長がみられ、1対1よりも教育のしやすさを実感するとともに、2人の学生の成長を促すための評価や教育方法の難しさを感じた。また、アンケート調査では9名中8名は2対1モデルを実践したくないと回答し、その理由として2人の学生を気にかけ評価しながら診療業務を行うことや学生の管理を行うことの大変さ、教育の方法がわからない、実践したことがないなどの意見が多かった。</p><p>【考察】 2対1モデルでの臨床実習教育では、CEが技術や臨床思考を伝えていく事はもちろんだが、学生を成長させていくファシリテーターとしての役割が重要だと感じた。指導に偏りが出ないように、それぞれの学生に合わせた指導、学生同士での意見交換を作る時間、学生に気づきを与えるようにディスカッションを設ける時間管理といったことが必要だと感じた。また、当院では1学校につき1人のCEが臨床実習教育を担当している。臨床実習教育を受け入れる側の課題として、日々の臨床業務に加えて2人の学生のファシリテーターを行うことは、CEの精神的疲労も増えると考えられるため、2対1モデルの教育方法の周知や検討、指導者の診療業務の負担軽減、実習担当者による学生の進捗状況や指導内容の情報共有などの取り組みが必要だと感じた。</p><p>【まとめ】 2対1モデルでの臨床実習教育を行うにあたり、学生の成長を促す工夫や時間管理といったファシリテーターの役割を担う一方で、日々の臨床業務を行う難しさや大変さを痛感した。それらを解消するために、CEの負担を減らしつつ2対1モデルの臨床実習教育を行なっていくための、施設側の取り組みが必要であると考える。</p><p>【倫理的配慮】 ヘルシンキ宣言に基づきプライバシーの侵害がないよう十分に配慮した。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390017289897091712
  • DOI
    10.32298/kyushupt.2023.0_104
  • ISSN
    24343889
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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