木津川流域における天井川の微地形と水利用

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  • Microlandforms and Water Utilization of Raised-bed Rivers in the Kizugawa River Watershed

抄録

<p>1.はじめに 天井川に関する研究は,天井川自体を研究対象として進行することが多い1),2)。しかし,天井川と周辺の河川地形との関連は触れられていない。また,地理情報解析の視点から見ると,これまでの天井川の研究は,点あるいは線として扱われることが多いが,天井川を面として扱う研究がなされなかった。本発表では,木津川中流域の天井川に着目し,天井川と微地形との関係を示す。また,天井川の水利用と微地形との空間関係を示す。2.分析方法 地理院地図を用いて地形区分を行った。現地調査で,天井川の断面と天井川に関わる水路,水利施設,水の流向を確認した。QGISにより天井川の地形断面を詳しく分析し,地形断面の特徴をまとめた。地形断面に基づいて,天井川の堆積量を推測した。基盤地図情報と現地調査から水路図を作成し,天井川の水利用と微地形との関連を議論した。3.天井川の地形断面と堆積量 天井川は扇状地の上で,特に自然堤防に沿って発達している。図1は,各支流と木津川との合流点から500m地点で見た天井川の地形断面モデルである。(1)は基本断面形で,上流の天端は下流より高く,上流の平野面は下流より低い特徴を持つ。(2)は木津川区間別に見た天井川の断面形である。上流から下流に行くと,河床と平野面の比高が大きくなり,河床と天端の比高が小さくなる特徴がある。また,上流より下流のほうが,両岸の平野面の比高が大きくなり,両岸の天端の比高が小さくなる特徴がある。次に,その500m地点での天井川の断面積と天井川の全長を乗じ,天井川の堆積量を推測した。その結果,天井川の体積が,両岸とも下流ほど大きくなるが,右岸が左岸の約3倍を示すことがわかった。原因として,右岸が左岸より何らかの原因で,潜在的に土砂の供給が大きいと考えられる。木津川の下流ほど,体積が増える背景として,人為的な洪水コントロールや流域面積やその比高に関わる地殻変動があると考えられる。4.天井川の水利用 木津川左岸の手原川,田辺北川,馬坂川,防賀川の現地調査の結果から地形区分図を背景とする水路図を作成した。それを見ると,溜池は山地と他の地形境界に位置しており,山地,山地を開発した住宅地,より上流の天井川からも直接取水している。他の地形には,田畑や住宅地が分布しているが,配水は手原川のみ天井川から,他の河川は溜池からなされている。そして,手原川以外の天井川は,排水機能のみが見られる。したがって,以上の水利システムの内,天井川の利用割合は,高い順に,手原川,馬坂川,田辺北川,防賀川となる。この傾向は,学研都市線沿線で進む住宅地開発の影響で生じたと思われる。そして,天井川から農業用水を配水する必要性は今後さらに低下することが予想される。5.おわりに 本研究では,次の2点を整理できる。1)木津川流域の天井川は基本断面形が共通しており,それは木津川の上下流方向で規則的に変化する。2)水利システムの中での天井川の必要性は都市化によって変化し,現在,農業への必要性が低下している。今後は,現在の防賀川のように,天井川は全体が撤去されることが考えられる。参考文献 1)山本徳三郎 1916.天井川の成因および将来.大日本山林会報 408:43-48.2)町田 貞・井口正男・貝塚爽平・佐藤 正・榧根 勇・小野有五 1981.『地形学辞典』二宮書店.</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390018384729599744
  • DOI
    10.14866/ajg.2024s.0_297
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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