開口障害を有する要介護・脳梗塞後遺症患者に対する口腔衛生管理

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  • Oral Health Management in An Elderly Patient with Physical Disabilities And Trisums Caused by Cerebrovascular Accident: A Case Report

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抄録

現在, 我が国は超高齢社会に突入している。しかしながら, 臨床の現場では適切な歯科治療を受けることができない要介護高齢者が急増している。本症例は開口障害のため口腔ケアを含めた歯科治療実施が困難な状況に陥った患者に対する病院歯科の歯科衛生士としてのアプローチを報告する。<BR>患者は, 81歳の女性で本院に長期入院中であった。脳梗塞後遺症の既往のため, 寝たきりで患者自身による口腔清掃が不可能な状況にあった。これまでは看護師によって日常的口腔清掃を実施し, また, 歯科衛生士によって週一回の割合で専門的口腔ケアが行われていた。しかし, 開口障害のために口腔ケアは技術的に困難であり, 口腔衛生状態は改善されないまま経過していた。そのため家族や病棟看護師から患者の強い口臭が指摘され, あらためて院内歯科に対して, その改善を依頼された。そこで, 我々はまず患者の開口障害の原因追究を試みるために医科に照会したところ, 中枢性の開口筋麻痺と診断された。歯科治療は, 継続的な開口訓練によって, 口腔清掃可能な開口量の確保を第一方針として取り組んだ。その結果, 3ヵ月後には約三横指の開口が可能になり, 専門的口腔ケアが可能になった。その後, 主訴である口臭の改善に加え, 口腔衛生状態や歯周炎症は著明に改善した。さらに口腔衛生状態の改善に相応して, 誤嚥性肺炎に起因すると考えられる発熱の頻度が減少し, 全身状態の改善も見られた。<BR>以上のことから, 病院歯科に従事する歯科衛生士は, 入院患者の口腔衛生状態の確保を通して, 全身の健康状態の改善に貢献することが重要な責務であると考える。<BR>日本歯周病学会会誌(日歯周誌)52(1) : 62-72, 2010

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参考文献 (31)*注記

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