北海道におけるカナワラビ属3種の比較生活史

  • 佐藤 利幸
    The Institute of Low Temperature Science Hokkaido University

書誌事項

タイトル別名
  • Inter-specific comparison of the life history of three Arachniodes ferns in Hokkaido
  • 北海道におけるカナワラビ属3種の比較生活史〔英文〕
  • ホッカイドウ ニ オケル カナワラビゾク 3シュ ノ ヒカク セイカツシ エイ

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抄録

北海道に生育するカナワラビ属3種の生活史を,垂直分布,生育場所,成熟開始,成熟度,葉形および葉数に着目し,胞子体の発達過程を通じて定量比較を試みた。北海道の11の山について垂直分布を調べると,シノブカグマ A. mutica, ナライシダ A. miqueliana, リュウメンシダ A. standishii では,それぞれ 925.6, 718.9, 565.4 m の平均標高に分布している。最大中軸分枝数 (MNV) は,それぞれ,59, 66, 79-NV であった。MNV は平均標高の増加に伴い減少する。成熟開始は相対的 (RDA, 比較発達齢,100×NV/MNV) にみると,64.4, 59.1, 60.8% で示され,垂直分布との相関は明瞭ではなかった。明るい落葉広葉樹林下に生育するナライシダが,最も早い成熟開始と高い成熟度を示した。葉形の確立過程を羽片軸の分枝数を用いて定量化してみると,シノブカグマとリュウメンシダは,三角状楕円形までは同じ過程をたどり,シノブカグマはさらに楕円状卵形に近づく。シノブカグマは MNV が最も少ないにも関わらず,葉数も増加させる傾向があり,3種の中では胞子体構造を最も分化させた種と思われる。一方,ナライシダの葉は三角形から五角形への変化が見られ,他の2種とは異なった確立過程をたどり,あわせて葉数も1〜2枚にとどまる。このように胞子体の発達過程にもとづき形態の定量比較をしたところ,ナライシダが他の2種とは,類似性が少ないことが示され,従来の類縁関係の評価と一致することが示された。

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