口唇裂術後のケロイド予防におけるX線照射
書誌事項
- タイトル別名
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- X-RAY IRRADIATION FOR THE PREVENTION OF KELOID AFTER CLEFT LIP PLASTY
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抄録
口唇裂術後のケロイド発生頻度はおよそ20~30%といわれている.ケロイドの発生予防にはリザベンやステロイド投与, 密封療法あるいは放射線照射が行われている.我々は口唇裂術後X線照射を施行し, 6カ月以上経過観察が可能であった164症例についてX線照射の有用性と問題点を検討した.X線照射は原則として術後5日以内に開始し, 抜糸前に終了するようにした.X線照射の一回線量は200Rまたは300Rで, 照射回数は通常3回とした.また管電圧は縫合部の深さにより30KVまたは45KVを選択した.ケロイドの判定は瘢痕の幅が広く, 盛り上がりと赤味の強いものをケロイドとした.ケロイドの発生率はX線照射群で14.6%, 非照射群で26.5%であった.X線照射群でケロイド発生率が有意に低く (p<0.01) , 口唇裂術後のケロイド発生予防にX線照射が有用性であることが確認された.照射開始時期は早期に開始すべきとの報告が多いが, 創部の治癒が完成する1週間から10日までに開始すれば良いと考えられた.我々は原則として3日連日照射としているがこの照射期間及び分割回数で特にケロイド発生予防効果が劣ることはないと考えられた.総線量600Rと900Rでケロイド発生率に有意差はなかった.これは900Rの方がケロイドが発生し易い創を対象としていることが原因の一つと考えられた.またケロイド治療では一般にケロイド切除後, 総線量1200Rから1500Rで良好な制御率を示しているのに対し, 600Rと900Rはいずれも総線量が低くケロイドの制御率に差が出難いものと考えられた.管電圧30KVと45KVではケロイド発生率に有意差はみられず, あえて45KVで照射をする意義はないと考えられた.片側性口唇裂ではX線照射群のケロイド発生率は有意に低かったが, 両側性口唇裂では有意差は見られなかった.これもやはり両側性口唇裂はケロイドが発生し易い事と総線量が少ないためと考えられた.X線照射の総線量を1200R~1500R程度とする事でケロイド発生をより減少でき, またこの程度の線量では色素沈着の増加は見られないことが示唆されたが, 今後症例の蓄積と検討が必要と考えられた.
収録刊行物
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- 昭和医学会雑誌
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昭和医学会雑誌 52 (3), 272-278, 1992
昭和大学学士会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282679810933760
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- NII論文ID
- 130001826903
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- ISSN
- 21850976
- 00374342
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可