中高年者におけるQOLに関する研究 : 口腔内状況を中心に

書誌事項

タイトル別名
  • A Study on the Quality of Life among the Middle or Advanced Aged : An Approach from the Point of Oral Hygiene

この論文をさがす

抄録

わが国においても高齢者のQOLの維持・向上が重要であるとの認識が深まってきている。しかし,高齢者の身体・精神状態あるいは高齢者をとりまく環境要因などが複雑に影響しあっており,その実践は容易なことではない。それらの要因についての学際的な研究や実際の経験から得られるノウハウの蓄積が必要ではないかと思われる。本研究はそうした境界領域のうち歯科保健(口腔内状況)と身体的所見,健康感および生活環境(生活習慣,社会的活動)との関連について検討を試みたものである。対象は,東京都檜原村の平成5年度住民検診受診者175名(男性61名,女性114名,平均年齢は男性65.9±10.9歳,女性63.6±9.3歳)。老人保健法に基づく一般健康診査を基本とする住民検診に歯科検診,および歯科保健行動・生活習慣等の面接ききとり調査が加えられたものである。口腔内状況を評価する指標としては現在歯数と歯周疾患の程度,自覚的咀嚼能力,義歯装着の有無等を用い,それら口腔内状況と身体所見,社会的活動度,生活習慣との関連について検討した。因果関係の方向性については明確ではないが,これらの間には相互に関連が認められた。現在歯数の少ないことは社会的活動への参加も妨げるものと考えられた。また,自覚的咀嚼能力が良好であること,歯周疾患の程度がより軽いこと,および義歯を装着していることなどが,より健康的な生活習慣と結びつくこと,およびそれらが社会活動への参加と関連していることなどが示された。現在,中高年者の歯科保健に関しては8020運動が実施されているが,高齢期におけるQOLの推進のためには,老人保健法に基づく一般健康診査と同時に口腔内についても定期的な検診を行うとこが有用である可能性が示唆された。

収録刊行物

被引用文献 (2)*注記

もっと見る

参考文献 (31)*注記

もっと見る

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ