GISによる生活環境分析の新たな展開(<特集> 環境問題の多元化と経済地理学 : 循環型社会の形成にむけて)

書誌事項

タイトル別名
  • New Progress in Living Environment Analvsis using GIS(Special Issue : Diversification in Environmental Problems and Economic Geography : Agenda in Creating Cyclical Society)
  • 〔経済地理学会第48回〕大会報告論文 GISによる生活環境分析の新たな展開
  • ケイザイ チリ ガッカイ ダイ48カイ タイカイ ホウコク ロンブン GIS ニ ヨル セイカツ カンキョウ ブンセキ ノ アラタ ナ テンカイ

この論文をさがす

抄録

本稿では, GIS(地理情報システム)の研究の進展を踏まえて, GISによる生活環境分析の新たな動向を探ることを試みる.GISを利用した生活環境研究では, 町レベル以下の小さな空間スケールを対象に, 位置的外部性に注目した研究が始まっている.世帯に対する位置的外部性は, 世帯を中心に施設, 街路, 丁目, 町の4スケールに対し, どのような位置的属性をもった地区に包含されるかで規定される.生活環境は, 世帯に対する周囲の環境, つまり世帯が受ける位置的外部性の効果と捉えることができる.今後, 生活環境研究に位置的外部性の概念を積極的に導入するとともに, 建造環境のモデル化を目指す「地区の状況を鋭く捉えるGIS」を構築することによって, 生活環境を位置的外部性の効果という実体として分析することが可能となる.次に, 従来の生活環境分析で取り扱われてきた近接性について考察する.近接性の測定方法としては, (1)地区内に立地している施設数の測定, (2)施設への最短距離の測定, (3)距離の増加に伴う累積機会の測定, (4)引力タイプの測定, (5)時空間タイプの測定がある.生活環境分析との関連から, GISを利用してこれらの近接性を分析する場合, 新たな視点や方法として次の6点があげられる : (1)データの非集計, (2)道路距離での測定, (3)分析結果の視覚化, (4)空間行動における時間の重要性, (5)分析に基づいた解釈, (6)生活環境評価の総合化.最後に, GISを利用した近接性の分析事例として, 松戸市における眼科医院への最短距離の測定を紹介する.今後, 近接性からみた生活環境分析では, 空間的公平性を考えていくとともに, 時空間の合理性を追求することから, 近接性の空間的側面だけでなく, 時間的側面を考慮した研究方法を確立することが必要となる.

収録刊行物

被引用文献 (3)*注記

もっと見る

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ