ムラサキイモ色素の雄ラットを用いた中期多臓器発癌性試験での非発癌促進作用ないし非発癌性

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  • Purple Sweet Potato Color Lacks Tumor Promoting or Carcinogenic Potential in a Medium-term Multi-organ Carcinogenesis Bioassay in Male Rats

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抄録

ムラサキイモ(Ipomoea batatas Poir.)より抽出されたムラサキイモ色素のラット中期多臓器発癌性試験法による発癌性評価を実施した。6週齢のF344系雄ラット120匹を用い、複数の臓器に発癌イニシエーションを行う目的で実験開始時にN-nitrosodiethylamine(100mg/kg)を単回腹腔内投与し、N-methyl-N-nitrosourea(20 mg/kg)を第1および2週に4回腹腔内投与し、N,N'-dimethylhydrazine(40 mg/kg)を第3および4週に4回皮下投与し、N-butyl-N-(4-hydroxybutyl)nitrosamineを0.05%濃度で飲料水に混じて第1および第2週に投与し、N-bis(2-hydroxypropyl)nitrosamineを0.1%濃度で飲料水に混じて第3および4週に投与した(DMBDD処置)。DMBDD処置後、ムラサキイモ色素(0, 2.5, 5.0, 10.0%)および陽性対照物質のSodium phenobarbital(0.05%)をそれぞれ混餌にて第5から28週までの24週間投与した。DMBDD無処置(溶媒投与)後、ムラサキイモ色素(0, 10.0%)を混餌投与する群も設けた。全経過28週で屠殺剖検し、全身諸臓器を病理組織学的に検索した。さらに肝臓については肝臓の前癌病変である胎盤型glutathione S-transferase(GST-P)陽性細胞巣を免疫組織化学的染色で、大腸についてはaberrant crypt foci(ACF)をメチレンブルーにて染色し、それぞれ定量的に解析した。被験物質投与に起因した一般症状は見られず、体重、摂餌量にも影響を認めなかった。病理組織学的検査の結果、被験物質投与によって全身諸臓器に観察された前腫瘍性および腫瘍性病変発生の促進を認めなかった。また、肝臓切片単位面積当たりのGST-P陽性細胞巣の定量値には、肝臓発癌を示唆する促進効果は認められなかった。さらに大腸ACFの個数および大きさには、被験物質投与群と対照群との間に差異を認めなかった。以上の結果より、本試験法においてムラサキイモ色素はいずれの臓器・組織にも発癌促進作用あるいは発癌作用を示さないことが強く示唆された。

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