飼育期間の異なる長崎県産マガキシングルシードの呈味成分の比較

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  • Taste component comparisons of single seed Pacific oysters collected in the first and the second harvest years in Nagasaki prefecture

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抄録

われわれは長崎県諌早湾小長井地区で、シングルシード法によって養殖された飼育期間の異なるマガキCrassostrea gigasの呈味成分について比較した。シングルシード法によるマガキの貝殻は伸長が遅いため商品サイズに満たないことがあり、1年多く飼育することがある。このように、もうひと夏越して2年目の収穫期を迎えたマガキシングルシードと収穫期1年目の通常のマガキシングルシードの味が、飼育年数の違いによって影響を受けるかどうかを調べるため、遊離アミノ酸、核酸関連化合物およびグリコーゲン量を分析した。本研究ではこれら成分変動の環境による影響を少なくするために、試料には2013年の2月と12月、2014年の1月と2月の計4回の異なった時期に水揚げされたマガキシングルシードで収穫期1年目および2年目を迎えた各2群の試料を用い、4回の比較結果を解析した。統計処理には繰返しのある二元配置分散分析を全群間に施した。また、1年目と2年目のマガキ2群間の比較を目的として、t-検定を独立して行った。その結果、収穫期2年目のマガキは通常の1年目に比べ軟体部重量が有意に高かったが、2年目のマガキは身入りが1年目より有意に低かった。また遊離アミノ酸では、甘みに関するセリン、アラニンおよびグリシンに関して、2年目のマガキは1年目のマガキより有意に低かった。さらに、2014年1月に水揚げされたマガキシングルシードで、グリコーゲン量とATP関連化合物の含量を測定したところ、飼育期間による有意な差はいずれにも見られなかった。このとき、加熱試料における官能評価を行ったが、コクと旨みに関して収穫期2年もののマガキに1年もののマガキより得点が大きくなる傾向が見られたものの、全体として収穫期の違いによる嗜好の増減に有意な差は認められなかった。これらの結果から、収穫期2年目を迎えたマガキシングルシードは、1年目のマガキよりサイズは大きいものの、遊離アミノ酸分析の結果から甘みはやや劣る可能性がある。一方、AMP、イノシン酸、グリコーゲン量および官能評価の結果で両者に有意差がないことから、飼育期間によるマガキシングルシードの味の違いはほとんどないと推察された。

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