日本初記録のTonza属(スガ上科,所属未定)の分類学的位置の再評価

  • 小林 茂樹
    Entomological Laboratory, Graduate School of Life and Environmental Sciences, Osaka Prefecture University
  • SOHN Jae-Cheon
    Department of Entomology, Smithsonian Institution, National Museum of Natural History
  • 吉安 裕
    Entomological Laboratory, Graduate School of Life and Environmental Sciences, Osaka Prefecture University

書誌事項

タイトル別名
  • Reevaluation of the systematic position of the genus Tonza Walker (Yponomeutoidea: family incertae sedis), based on Tonza citrorrhoa Meyrick, new to Japan

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抄録

Tonza属(スガ上科)は,コナガ科の一属として南アジアとオーストラリア地域から3種が記載された小型の蛾類である.成虫は,開張15mm内外で前翅は白色で淡色条が中央に走り,周囲に黒点が散在する.3種は,前翅の翅頂の形状で識別できる.本属は,1900年初頭の記載以降,形態に関する記載がなく,またコナガ科の他の属に比べて翅脈が著しく退化しており,その所属に疑問があった.2014,2015年に沖縄県で灯火採集によりえられたツトガに似た斑紋をもつ標本を詳細に観察した結果,日本初記録の本属の一種であることが明らかになった.成虫の形態を詳細に記載し,本種の翅脈および本属の雌雄交尾器を初めて明らかにした.コナガ科を含むスガ上科の11科と成虫形態を比較した結果,本属は,コナガ科の共有形質を欠き,その他の形質からもコナガ科への所属には疑いがあり,むしろ熱帯域に分布するアテバガ科Attevidaeに雄交尾器などの特徴が似ていた.しかし,所属する科の決定には,幼虫,蛹の形態を解明すること,南半球のスガ上科相と比較し有用な形質を探索する必要があり,今回は科の扱いを保留した.Tonza citrorrhoa Meyrick, 1905 エグレカイハネガ(新称,新記録種) 開張14.0mm.前翅は白色で翅中央に淡色条が走り,黒点が散在する.翅頂と後角部が突出し翅縁の中央部はへこむ.前翅のR脈は3本で縁紋を欠く.雄交尾器のウンクスは一対の細長い突起をもち,ソキウスとテグメンの突起は発達し,グナトスを欠く.バルバは,中央に硬化した複数の突起をもつ.雌交尾器のラメラ・アンテバギナリスは,強く硬化し,ラメラ・ポストバギナリスは発達せず,コルプス・ブルサエにシグナをもたない.幼生期は不明.灯火で一度に複数個体が採集されている.和名は,翅形が船を漕ぐ櫂の形に似ることにちなむ.分布:沖縄(沖縄島,与那国島);台湾,スリランカ.寄主植物:不明

収録刊行物

  • 蝶と蛾

    蝶と蛾 66 (2), 68-76, 2015

    日本鱗翅学会

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