アミノ酸強化の意義と強化により期待される効果

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タイトル別名
  • アミノサン キョウカ ノ イギ ト キョウカ ニ ヨリ キタイ サレル コウカ ガクドウ ノ タンパクシツ セッシュ ト アミノサン ホソク ノ モンダイ
  • 学童の蛋白質摂取とアミノ酸補足の問題

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抄録

約10年前, 主に施設児童を対象とし, それが一般児童に比べて相対的な意味で低栄養状態におかれており, そのため生理機能はほぼ正常であっても形態的な面, つまり発育がかなりおくれていることを知った。しかもその改善として, 食餌量全体のレベルアップ, ことに蛋白質の量ならびに質の改善がかなり有効であると考えられる成績をえ, これをアミノ酸強化の問題にまでおし進めてきたわけである。<BR>すでに述べたように, 現時点においても学童の摂取栄養量には明らかな地域格差がみとめられる。全体的にみて年々そのレベルが向上していることは, 厚生省国民栄養調査成績からも窺われるところであるが, しかレー方, 大都市, 農村, そして僻地の格差は相対的にいつまでもつづいているのである。たとえば前出 (表8) の最下欄に示したように, 昨年の徳島県下一級僻地山村における調査成績によると, その摂取食餌内容は約10年前の生活保護世帯児童にみられたとほぼ同程度の低さを示している。そしてその山村学童の体位もまた (図8) にみるようにかなり遅れていることが分る。相対的低栄養とこれにともなう学童の体位低下は現在のわが国の問題なのである。<BR>こうした栄養格差の是正の第1歩として, 蛋白質栄養の問題は現在もっとも重要なものの一つであり, しかも蛋白質の質改善のもっとも根本的な, またもっとも現実的な解決はアミノ酸強化によって果されうるとの理念をもたざるをえないように思う。<BR>工業力のめざましい高度成長のかげに, 経済生活のいちじるしい格差をもたらしているわが国の現状では, その消費生活水準もまたはげしく動いている。食生活もいちじるしい変動期にあるとみてよく, われわれは国民の食生活水準をただ単に平均値で眺めるのみではなくて, あらゆる角度をふくめて生態学的見地あるいは栄養動態学的立場からとらえることが必要である。<BR>児童の場合においても同様で, 成長と蛋白質栄養という根本的問題解決の努力と同時に, そのためにはまずわが国児童の蛋白質摂取実態と体格の問題を“栄養生態学”的見地から正しくとらえることがなにより大切である。<BR>アミノ酸強化の意義と強化により期待される効果は, 正にこうした地域格差の是正にこそ見出さるべきものであろうと思う。

収録刊行物

  • 栄養と食糧

    栄養と食糧 20 (4), 267-276, 1967

    公益社団法人 日本栄養・食糧学会

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