うつ病のバイオマーカーと治療標的分子:マックスプランク精神医学研究所と国立精神・神経医療研究センターのジョイントシンポジウム

  • 功刀 浩
    国立精神・神経医療研究センター神経研究所 疾病研究第三部

書誌事項

タイトル別名
  • Biomarkers and therapeutic targets of depressive disorder:A joint symposium of Max Planck Institute of Psychiatry and National Center of Neurology and Psychiatry, Japan
  • ウツビョウ ノ バイオマーカー ト チリョウ ヒョウテキ ブンシ : マックスプランク セイシン イガク ケンキュウジョ ト コクリツ セイシン ・ シンケイ イリョウ ケンキュウ センター ノ ジョイントシンポジウム

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抄録

本シンポジウムは,うつ病の病態や抗うつ薬の治療反応性において重要な役割を果たしている分子やバイオマーカーについて,以前より連携関係をもつマックスプランク精神医学研究所(F. Holsboer 所長)と国立精神・神経医療研究センター(樋口輝彦総長)の研究グループが最近の知見について発表し,討論を行った。第 1 シンポジストの功刀は,視床下部─下垂体─副腎系(HPA 系)をモニターするデキサメサゾン/ CRH テストが,うつ病の類型化に有用であること,FKBP5 と ABCB1 が,HPA 系の調節やうつ病発症に関与する重要な分子であることを示した。第 2 シンポジストの Ising 教授は,抗うつ薬への治療反応性を規定する有力分子として FKBP5 と ABCB1 を挙げ,これらの末梢血遺伝子発現や遺伝子多型がオーダーメイド医療を行うためのマーカーとして有用であることを示した。第 3 シンポジストの沼川は, HPA 系の最終産物であるグルココルチコイドが BDNF の機能を低下させることについて,培養ニューロンを用いた細胞生物学的データによって示した。第4シンポジストのTurck教授は,マウス海馬のプロテオミクスとメタボロミクスによって,不安様行動やパロキセチン持続投与と関連する分子を探索し,エネルギー代謝や酸化ストレスに関与する分子群が共通に変化することを示した。以上のように,うつ病や抗うつ薬の病態・治療メカニズムについての有機的な発表・討論がなされ,今後の日独研究者の連携を深めることにもつながる有意義なシンポジウムであった。

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