最近の漁船の性能について

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タイトル別名
  • Study on the Characteristics of the Last Fishing Boats in Japan
  • サイキン ノ ギョセン ノ セイノウ ニ ツイテ

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抄録

現在稼動している船長15m以上の漁船を漁業種類によって分類しその実態と性能を明らかにした。1)各種漁船とも大型化が進行しL,B,Dの相乗積が増加し,最近の沖合底曳網漁船および以西底曳網漁船ではC_bの値は0.700より大きい。C_pは各種漁船とも0.71〜0.75の間である。またC_ωでは揚網時の復原力を必要とする旋網漁船が最も大きい。船の重量が増すにつれて必然的にC_b,C_ωの値を大きくしている。2)総トン数当りの主機関馬力数は増加しているが船型の肥大化のために従来の船速を維持するにとどまっている。3)延繩釣漁船50トン以上100トン未満階層の代表であるイカ釣漁船において発電機出力は異常に増大し,集魚灯における過当競争を反映している。4)200トン未満の沖合底曳網漁船,以西底曳網漁船および旋網漁船,100トン未満の延繩釣漁船および一本釣漁船では総トン数当りの魚倉容積が減少傾向にある。遠洋底曳網漁船,刺網漁船そして100トン以上の延繩釣漁船,イカ釣漁船および200トン以上の一本釣漁船などでは反対に総トン数当りの魚倉容積が増加している。これらの漁船の貯蔵・運搬手段としての性能のそれぞれの傾向は漁業実態を反映したものである。5)旋網漁船をはじめ100トン以上の底曳網漁船では乗組員数が増加している。漁船漁業における漁獲努力偏重の機械化により漁獲量追求のための漁撈時間の延長となり労働強化となっている。6)各種漁船の船体停止距離および時間は船長に比例している。7)旋回所要時間は船長に比例し,船長65m未満の漁船では約3分以内である。8)各種漁船の静復原挺曲線を3状態について計算した結果底曳網漁船では満載状態よりも軽荷状態において復原力は小さい。おおむね船規模の大小で復原性能の良否が決っている。9)124トン沖合底引網漁船Bにおける運動性能は上下揺,横揺ともに軽荷状態のときよりも満載状態のときの方が√<L/λ>=0.7〜0.8で大きく揺れる。したがって安全性能は静的にも動的にも総合的に考える必要がある。10)現在わが国の漁船の性能は漁業生産力を発展させるための漁業における生産手段としての漁船と漁具の適正な均衡の上にあるのではなく,無制限な主漁具の大型化と操業の機械化合理化,さらには漁場への往復航海の短縮などの諸要求が漁船の性能として具現されたものである。したがって資源管理を念頭においた適正な漁業規模の調整を漁船と漁具の一体の中で行なうことにより漁船そのものの性能の向上がある。

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