中学校で発生した集団有機リン中毒

Description

〈はじめに〉有機リン系殺虫剤は最も多く使用される農薬<BR> 群の一つである。本学会関連病院から,2008年夏に某中学<BR> 校で集団有機リン中毒が発生したとの情報提供があった。<BR> 中学生が搬送された4病院の協力を得て,本学会・特別研<BR> 究プロジェクト・農薬中毒部会として調査を行ったので,<BR> その結果を報告する。<BR> 〈方法〉当部会が策定した農薬中毒報告票に加えて,本事<BR> 例用に策定した質問票により調査した。<BR> 〈結果〉散布された農薬は,有機リン系殺虫剤メチダチオ<BR> ンの40%製剤であり,通例は1,000倍程度に希釈して使用<BR> される。2008年7月下旬,学校関係者がアリ対策のため,<BR> 原液を,10~11時頃に校舎近くのマンホールに散布した。<BR> 付近の教室内にガスが流入し,中学生たちが被害を訴え,<BR> 昼ごろから16名が4病院に搬送された。また,1名が不安<BR> を訴え,夜に受診した。<BR> 昼頃に搬送された16名の訴えた症状を集計すると,「頭<BR> 痛」13名(81%),「吐気・嘔吐」11名(69%),「めまい」<BR> 4名(25%)などであった。コリンエステラーゼ活性値<BR> (ChE)は,6名について来院時の測定結果が報告され,<BR> 全て正常範囲内であった。瞳孔径は,15名について来院時<BR> に観察された結果が報告され,全て正常範囲内であり,対<BR> 抗反射も異常なかった。3名が,経過観察のため入院した<BR> が,全員治癒し,後遺症は見られなかった。<BR> 〈考察〉中学校の教室付近で通常ありえない散布が行わ<BR> れ,その後に健康被害が発生したこと,訴えの多かった症<BR> 状が,「頭痛」,「吐気・嘔吐」であったことから,集団的<BR> な有機リン中毒であることが強く疑われた。ただ,ChE,<BR> 瞳孔径については異常が見られず,軽症で止まったものと<BR> 推察された。<BR> しかし,集団有機リン中毒であることはほぼ確実で,原<BR> 液をそのまま散布したことは,厳に戒められるべきであ<BR> り,再発防止が図られる必要がある。<BR> 調査にご協力いただいた医師および関係者に深謝する。<BR>

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Details 詳細情報について

  • CRID
    1390282680493922560
  • NII Article ID
    130006943778
  • DOI
    10.14879/nnigss.58.0.75.0
  • ISSN
    18801730
    18801749
  • Text Lang
    ja
  • Data Source
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • Abstract License Flag
    Disallowed

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