光線照射が自己接着性レジンセメントの初期接着挙動に及ぼす影響
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- タイトル別名
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- Influence of Light Irradiation on the Early Bonding Characteristics of Self-adhesive Resin Cements
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抄録
目的:レジンセメントに機能性モノマーを含有させることで,前処理を不要とした自己接着性レジンセメント(以後,自己接着セメント)の臨床使用頻度が増加している.これらの自己接着セメントの接着性を知ることは,臨床的にも重要であると考えられるものの,その初期における挙動については不明な点が多い.そこで,光線照射の有無が自己接着セメントの初期接着挙動に及ぼす影響について,象牙質に対する剪断接着強さを経時的に測定するとともに接着試験後の破断面の観察を行うことで検討した.材料と方法:供試した自己接着セメントは,クリアフィルSAセメントオートミックス(SA),リライエックスユニセム2オートミックス(UC)およびビューティセムSA(BC)の3製品である.硬質レジンを硬化させた試片(直径4mm,高さ2mm)の表面をサンドブラスト処理した後,練和したセメント泥を塗布,ウシ歯象牙質被着面に加圧,圧接した.余剰セメントを除去した後,光強度を600mW/cm^2に設定し,30秒間光線照射を行う,あるいは照射を行わないものを接着試片とした.これら接着試片を37±1℃,相対湿度90±5%の条件で10分および1,6,12,24時間保管した後,剪断接着強さを測定した.また,接着試験後のレジン側破断面についてSEM観察を行った.成績:自己接着セメントの接着強さは,供試したいずれの製品においても光線照射の有無にかかわらず経時的に上昇したが,その上昇傾向は光線照射を行わない条件で大きかった.また,いずれの製品においても,光線照射を行わない条件と比較して光線照射を行う条件で有意に高い接着強さを示した.接着試験後の破断面のSEM観察では,光線照射を行わない条件では,10分後ではいずれの自己接着セメントにおいてもセメントの歯質からの剥離が観察されたのに対し,24時間後ではUCでは歯質とレジンとの混合破壊像を示した.光線照射を行う条件では,10分後ではいずれの自己接着セメントにおいてもセメントの歯質からの剥離が観察されたのに対し,24時間後ではUCでレジンの,BCでセメントの凝集破壊像が観察された.結論:自己接着セメントの初期接着挙動は,光線照射を行う条件と比較して光線照射を行わない条件で有意に低い値を示した.したがって,自己接着セメントを臨床使用するにあたっては,光線照射条件に留意するとともに,各製品の硬化特性を十分に考慮して一連の修復操作を行うことが重要であることが示された.
収録刊行物
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- 日本歯科保存学雑誌
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日本歯科保存学雑誌 56 (6), 600-609, 2013
特定非営利活動法人 日本歯科保存学会
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キーワード
詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680498020352
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- NII論文ID
- 110009830619
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- ISSN
- 21880808
- 03872343
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可