立ち上がり介助機器の試作

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  • タチアガリカイジョ キキ ノ シサク

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抄録

【目的】立ち上がり介助は、被介助者を転倒させるリスクはもとより、介助者側にも腰痛等のリスクがあることを我々は経験的に知っている.しかしいかなる理由でリスクが高くなろうとも我々が、被介助者のリハビリやADL動作獲得のための立ち上がり介助を避けたり回数を減らす事は許されない.そのような状況の中、我々は一般に行われる介助者の膝で被介助者の膝を固定して行う方法とテコの原理に着目し、簡単に装着できて、かつ少ない力で立ち上がらせることが出来る機器を試作し、若干の知見を得たので報告する.<BR>【本機器の仕様と基本機構】基本機構は、介助者の左右どちらかの膝を被介助者の膝に装着した膝支持具の真ん中に当て、両脇の位置に当てた背部支持具の両グリップ部を介助者が両手で手前に引っ張る事で被介助者の立位姿勢を完成させるものである.<BR>【一般的な介助法と本機器による介助法の介助量の比較】一般的な介助法と本機器使用の介助法との介助量を計測し比較した.対象者は、伸長156cm、体重58.7kgの22歳女性であった.計測は全介助による椅子からの立ち上がり時の最大介助量とし、スメドレー型握力計S7070を左右1個ずつ計2個用いて行った.そして、それぞれ立位姿勢が完成するまでに必要な介助量の最大値を、一般的介助法と本機による介助法とで、それぞれ5回ずつ計測し、左右の握力計の合計した数値をパラメトリック検定のpaired t-testにて処理した.<BR>【結果】一般的な介助法では、平均45.3±0.8kg、本機器使用の介助法では25±0.9kgであり、明らかな差があった.また、統計学的にも一般的介助法と本機による介助法の比較において危険率1%で有意差が認められた.また高齢者に使用したインタビューでも、「膝折れの不安がなく立っていても恐くない.」と話された.<BR>【考察】介助の方法には、介助者の膝で被介助者の膝を押さえる方法や本機器と同様に介助者と被介助者の膝の間にクッションを置く方法がある.しかし、前者では被介助者が膝に痛みを訴えたり、途中で互いの膝が安定しないという問題点がある.また後者は、クッションの固定が出来なかったり着脱できるようにしても煩雑であったりなどの問題点があると考える.さらに腰ベルトについては、支持する位置関係から力学的に有利に働きづらいという問題点もあると考える.そこで本機器は、膝支持具を柔らかいが強固な素材で製作し、素材のしなりとゴムバンドを使用することで簡単に脱着できるようにした.また、膝支持具があれば背部支持具を効率の良い所で支持できることも分かった.<BR>【まとめ】介助者の腰痛等のリスクの軽減はもとより、高齢化社会における老老介護など肉体的弱者が介助しなければならない状況で役に立つ機器でもあると考える.なお、患者様の写真撮影では患者様へ本研究目的を説明し、同意を得た事を付記する.

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2008 (0), E3P3242-E3P3242, 2009

    公益社団法人 日本理学療法士協会

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