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上部体幹屈曲位,いわゆる猫背姿勢での歩行はハムストリングスの筋活動を上昇させる
Bibliographic Information
- Other Title
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- 大腿二頭筋の筋活動上昇と股関節屈曲角度との関係
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Description
【目的】<BR>歩行中,身体は2つの機能的単位であるパッセンジャー(上半身と骨盤)とロコモーター(骨盤と下半身)に分けられ,ロコモーターの筋活動の有無や程度はパッセンジャーの姿勢で決定される(月城,2005)。しかしながら,歩行中のパッセンジャーの姿勢がロコモーターの筋活動に与える影響については良く分かっていない。先行研究(高橋,1998)より体幹を股関節において35°に屈曲させた歩行では,大殿筋,中殿筋,大腿二頭筋の筋活動が歩行周期を通しておよそ200%に増加したと報告がある。しかし,健常人がこのような姿勢で歩行することは稀であり,むしろいわゆる猫背と言われる上部体幹屈曲姿勢を呈す場合が多い。本研究では,パッセンジャーの姿勢がロコモーターの筋活動に与える影響について検討し,その際歩幅や歩行速度,股関節の運動が両者の関係に影響を与えるか明らかにすることを目的とし以下の研究を行った。<BR>【方法】<BR>対象は,整形外科学的・神経学的に問題のない健常男性15名(年齢22.1±1.2歳,身長:170.5±4.1cm,体重:63.5±8.1kg)とした。<BR>歩行条件は1)体幹装具を装着(上部体幹中間位)での歩行(以下,条件A),2)体幹装具を装着で上部体幹屈曲位での歩行(以下,条件B)の2条件とし,それぞれ5回ずつ実施した。なお歩行は快適速度とした。体幹装具は,ダイヤルロック式サブオルソレン装具を使用した。矢状面上の歩行動作をデジタルビデオカメラ(SONY,HDR-CX550),により撮影し,動画解析ソフトDartfish(株式会社ジースポート),を用いて踵接地時の股関節屈曲角度と上部体幹屈曲指標を計測した。なおこれらを同定するため,マーカーを対象者の右上前腸骨棘,右上後腸骨棘,右肩峰,右大腿骨外側顆,右大転子に貼付した。<BR>歩行中における大殿筋,中殿筋,大腿筋膜張筋,大腿直筋,内側広筋,外側広筋,半腱様筋,大腿二頭筋(以下,BF)の筋活動を表面筋電計(Noraxon社製)を用いて測定した。最大等尺性収縮時の筋活動を100%として標準化し,踵接地から0.1秒間の積分値を求めた。統計は条件間の筋活動の違いを対応のあるt検定, B条件での筋活動上昇を説明する変数を同定する目的で重回帰分析をそれぞれ実施した(alpha=0.05)。<BR><BR>【説明と同意】<BR>対象者には事前に本研究の目的を十分説明し,EMGを用いた運動機能測定に関する十分な理解と協力の意思を確認し,同意書を得た上で実施した。<BR>【結果】<BR>条件Aに対して,条件Bで筋活動が上昇した筋群は,BF(p=0.004)であった。また,重回帰分析によりBFの筋活動上昇を説明する変数として,歩幅(B=3.069,p=0.044)と股関節屈曲角度(B=-0.400,p=0.082)が抽出された。<BR>【考察】<BR>条件Aに対して条件Bでは,BFのみ有意に筋活動の増大を認めた。条件Bでは条件Aよりも重心線が通常よりも前方に移動するため,外的股関節屈曲・膝関節伸展モーメントが増大した結果,拮抗する大腿後面の筋群を中心に筋活動量が増大したと考えられる。殿筋群は,単関節筋であり主に関節の安定化に寄与すると言われているが,上部体幹屈曲位での歩行においては,脊柱起立筋とハムストリングスを結ぶ筋・筋膜を介して(Myers,2001)股関節でなく膝関節にストレスが大きくかかった可能性がある。 BFの筋活動上昇を説明する変数として,股関節屈曲角度の減少が抽出された。これは骨盤後傾角度の増大に伴うBFの筋活動の増加を意味している。この理由については推測の域を出ないが,上部体幹屈曲による腰椎の代償的伸展がより困難な者は,踵接地時の外的体幹屈曲モーメントが高まった結果BFの活動が亢進した可能性がある。<BR>また,骨盤後傾角度の増加に伴って股関節は自動的に外旋し,膝関節は屈曲・内反する(佐保,1996)と言われており,その反応的活動としての膝関節外反保持のため,BFが活動を高めた可能性も否定できない(福井,1997)。<BR>これらの結果から,上部体幹屈曲はBFの筋活動を亢進させ,BFの活動は股関節屈曲角度の増減に関連することが示唆された。<BR>【理学療法学研究としての意義】<BR>若年健常者男性において腰椎疾患有病率は非常に高く,臨床現場ではハムストリングスの短縮やタイトネスが散見される。こういった病態の一因として上部体幹の屈曲姿勢,いわゆる猫背が関与している可能性は以前より指摘されていたものの,それを実証したものは無かった。本研究はその根拠を呈示できたのではないかと考える。踵接地時のBFの活動に股関節屈曲が関与している要因として前額面上の運動機能連鎖の作用も考えられ,今後の検討課題である。
Journal
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- Congress of the Japanese Physical Therapy Association
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Congress of the Japanese Physical Therapy Association 2010 (0), AdPF1005-AdPF1005, 2011
Japanese Physical Therapy Association(Renamed Japanese Society of Physical Therapy)
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Details 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680550447616
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- NII Article ID
- 130005016729
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- Text Lang
- ja
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- Data Source
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- JaLC
- CiNii Articles
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- Abstract License Flag
- Disallowed