中学生の自由献立による調理実習と調理技術についての研究(5)

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タイトル別名
  • Study on practice of cooking class and cooking skills of junior high school students(5)

抄録

【目的】<BR>  「食生活」に関わる学習では栄養・食品の選択及び安全・衛生面の知識に加えて調理を実践する技能も必須である。授業内で行なう調理実習は、実習室の設備や人数等の諸種の制約からグループで行われる事が多い。グループでの学習の有用性は大きいが、限られた回数で行なわれる実習に対して生徒側はイベントとして捉える傾向も否めない。また、調理作業はグループ内で分担して行なわれる為、作業の不平等が生じる可能性等があり、材料の選択や購入を含めた作業のすべてを一人の生徒が体験することも難しい。加えて、生徒は実生活において手伝いを含めても、調理に関わる機会は極めて少ない状況にある。そこで、調理に必要な知識と技能の向上を図り、意識を高めるために、授業内で行う調理実習に加えて、生徒が各家庭において自由献立による調理実習を行なう機会を設けた。この結果を10年前と比較することで諸種の問題点を明らかにし、今後の授業への展開へつなげる為の検討を行った。<BR> 【対象及び方法】<BR> 1)対象:都内私立A女子中学校、1~3年生。<BR> 2)方法:レポートによる記名式自由回答法及び質問紙を用いた記名式による集団調査法。調査期間は1995年~2005年。<BR> 夏休みのレポート課題として、生徒自らが各家庭において献立の作成、材料および調理用具の準備、調理全般、会食、片付け等の食事作りに関する一連の実習を行い、その結果を提出させた。また、食に関する知識、習慣等について質問紙調査を行った。<BR> 【結果及び考察】<BR> 1)レポート調査の結果から、家庭における自由献立実習の調理品目数の最頻値は3品目であった。調理品目数が増えると献立も複雑になり、調理品目数と調理時間の間には高い相関が認められた。献立で多く見られたのはカレー及びシチュー類、ハンバーグ類、スパゲティー類であった。<BR> 2)調理に使用した食品数を五訂食品成分表の分類に準じて集計した。同じ調理品目数でも使用した食品数には幅があり、ばらつきが大きいことが明らかになった。また、10年前と比較すると穀類・野菜類・魚介類等の使用は年次に伴い減少傾向にあるが、肉類の使用に差は認められなかった。<BR> 3)調理に使用した包丁、まな板、菜箸などの用具や器具の使用率は低下する傾向にあった。基本的用具である包丁やまな板などを使用せずに調理実習を行った生徒も存在していることが明らかになった。<BR> 4)まとめ:授業に加えて、家庭内で調理実習を行った結果をレポートとして提出させ、年次推移について検討を行った。調理品目数、調理時間、使用食品数、使用調理用具・器具数のいづれにおいても10年前と比較すると減少していることが明らかになった。これは生徒の調理に対する能力や意欲が少しずつ下がっているものと解釈することもできる。少ない献立を短い時間で簡単に作るという方向に傾いており、この状況は大変危惧されるところである。食に関する知識と調理技能を習得するための授業時間は減少している。将来、家族の命を支える彼女たちが「食事の大切さ」や「調理の重要性」を実感できるような、更には食生活全般の自立をめざして食事の管理や調理できる力を身につけるための指導方法・授業展開が早急に望まれる。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680571343488
  • NII論文ID
    130006961740
  • DOI
    10.11549/jhee.50.0.55.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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