作業療法学生の授業形態の違いによる課題価値

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  • 課題価値測定尺度を用いた検討

抄録

<p>【はじめに】</p><p>作業療法士養成教育では,多様化する学生の学習意欲を高め,主体的な学習へ導くことの重要性が指摘されている.主体的な学習には動機づけが重要であり,個人によってその動機づけは異なることから,学生がどのような動機のもと学習に取り組んでいるか,より正確に把握することが重要である.本研究では,課題価値という概念を用いて,授業形態の違いが学生に与える動機づけの在り方を明らかにすることを試みた.</p><p>【対象】</p><p>四年制専門学校作業療法学科の3年生37名,および3年生に対して開講される22の作業療法専門科目であった.</p><p>【方法】</p><p>課題価値とは,学習者が学習内容にどのような価値付けを行っているのかという観点から学習の動機づけをとらえるものである.この概念をもとに作成された尺度が課題価値測定尺度である.本尺度は,学習することの楽しさや面白さを表す「興味価値」,ある内容を学習することで自身が望ましいと考える自己像を獲得できるという「私的獲得価値」,その内容を学習することが他者からみて望ましいと考える「公的獲得価値」,学習内容が就職や試験で合格するために必要であるという「制度的利用価値」,さらに学習内容が職業的な実践において役立つという「実践的利用価値」の5つの下位尺度から成り,それぞれの下位尺度には6つの質問項目が含まれている.これを7件法で評価し下位尺度ごとに平均得点を算出する.</p><p>【分析】</p><p>まず,知識伝達型授業科目群と参加体験型授業科目群それぞれにおける授業に対する価値付けの傾向を把握するために,群ごとに下位尺度得点を求め比較を行った.つぎに,授業形態による価値付けの違いを明らかにするために、知識伝達型授業科目群と参加体験型授業科目群の2群間で下位尺度得点の平均値の比較を行った.検定には,一元配置分散分析およびBonferrini法による多重分析,対応のないt検定を用い,いずれも有意水準を5%とした.なお,本研究は鹿児島医療技術専門学校倫理委員会の承認(第1号)を得て実施した.</p><p>【結果】</p><p>対象としたすべての科目のアンケート回収率の平均は94.5%であった.知識伝達型授業科目群では、実践的獲得価値と制度的利用価値に比べ私的獲得価値は有意に低く(p<0.01,0.05),実践的利用価値に比べ興味価値は有意に低かった(p<0.05).参加体験型授業科目群では実践的利用価値と制度的利用価値に比し私的獲得価値が有意に低かった(p<0.01,0.05). 知識伝達型授業科目群と参加体験型授業科目群の下位尺度間での得点の比較では,すべての下位尺度において参加体験型授業科目群の得点が高く、興味価値、私的獲得価値、公的獲得価値、実践的利用価値において有意差がみられた(p<0.01,0.05).</p><p>【考察】</p><p>学生は授業形態に関わりなく授業に対する私的獲得価値の価値づけが低いことが明らかになった.本結果は自分が望ましいと考える自己像が未だ曖昧であり,望ましい自己像の獲得手段として授業を価値づけることが困難であることを示していると考えられる.一方,制度的利用価値,実践的利用価値はどちらも高い傾向にあり,学生の多くは将来の職業である作業療法士を意識して授業を受けていることが示唆された.また授業形態の比較において,参加体験型授業は,知識伝達型授業よりも私的獲得価値を除く総ての下位尺度得点が有意に高く,知識伝達型授業よりも学生の学習動機を高め,将来の職業をより意識させることが可能となる授業形態であることが確認された.</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>調査に際しては、成績などに影響しないことを説明し、個人が特定できないよう無記名での回答とした。本研究は鹿児島医療技術専門学校倫理委員会の承認(第1号)を得て実施した.</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680603031424
  • NII論文ID
    130005175430
  • DOI
    10.11496/kyushuptot.2016.0_36
  • ISSN
    24238899
    09152032
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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