食材の普及と流通・消費にみられる地域性

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タイトル別名
  • Regional characteristics on diffusion, distribution and consumption of foodstuffs
  • How peoples in Okinawa have been making in relationships with sauries and salmons?
  • 沖縄の人々はサンマ・サケをどう受け入れてきたか?

抄録

本研究では,当該地域(沖縄)で漁獲されない魚種(サンマ・サケ)を取り上げ,その流通・消費に注目し,地域の食卓への定着過程とその背景,活動の展開,供給地域との関わりを解明することを目的とする。これにより,沖縄の水産物流通・消費の特徴とその背景,日常の食生活をより深く理解できる。また,ある地域の食卓にある商材が定着する過程と必要性や可能性,利用にみられる地域性とその背景などに注目することは,各地での様々な商材の普及・定着の可能性の検討や,流通・消費を通じた地域間の結びつきと各地域・商品が獲得する位置づけや役割の検証にも資する。<br> 筆者は先に,全国の県庁所在都市世帯の水産物購入の組み合わせにみられる地域差を考察した(Hayashi,2003;林,2011)。沖縄(那覇市)の購入傾向の独自性として注目すべき点のひとつに,購入金額に占めるサンマ,サケ類の割合の高さが挙げられる。これが影響して,那覇市は東日本型の購入傾向に近いと分類された。<br> 沖縄(当時の琉球)で加工品ではない商材でのサンマが集荷され,普及しはじめたのは,1950年代末から1960年代初めである。当時の冷凍技術でも比較的流通状態が良好で,低単価でかつ効率よくタンパク質・脂質摂取が可能な食材であることから,冷凍サンマは主要貿易品目であった。一方,本土の水揚地域,関係業者としても,本土市場では扱いにくく低価格で取引されていた商材も出荷できるメリットがあった。復帰後には,本土からの人やモノの移動の増加の影響から,本土式の量販店・居酒屋の開業とそこを通じての本土の食材や献立の普及が進んだ。経済的事情,気候要件なども影響し,安価で周年調達可能な冷凍品は,ストック商材・販売促進商材として定着し,今日でもその役割は継承されている。<br> サンマ・サケはともに,年間通じて量販店で15~30%程度の棚面積を占め,水産部門の主要商材となっており,県産水産物の棚面積の縮小に影響を及ぼしている。台風等の影響,経済的背景もあり,「四定条件」を満たす冷凍品の扱いは重要で,特売日のアイテムとしても位置付けられている。冷凍サンマ・サケは,低単価でボリューム感があることから,惣菜・弁当材としても重要アイテムとされている。多用される調理法も,沖縄の食文化や気候条件などが影響して,本土のような塩焼きは少なく,フライやかば焼きなどが主である。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680669878400
  • NII論文ID
    130007015961
  • DOI
    10.14866/ajg.2011f.0.100021.0
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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