ナレズシ神饌と滋賀県の伝統的食文化の継承

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  • Narezushi as Ambrosia and Succession of the Traditional Food Culture in Shiga Prefecture

抄録

【目的】滋賀県は琵琶湖の周辺部に稲作地帯が広がり、湖魚と米に恵まれている。そして、湖魚と米を一緒に発酵させたナレズシは、滋賀県の代表的な伝統食品として継承されている。さらに、神社の行事が丁寧に継承されており、特に春祭は盛大で、湖魚のナレズシが神饌として登場することもある。本研究では、ナレズシ神饌を調査することで、滋賀県の食文化の特徴を明らかにするとともに、ナレズシ文化継承の課題を探ることを目的とした。 <br>【方法】ナレズシを神饌とする (1)栗東市大橋、5月3日三輪神社の春祭、(2) 栗東市中沢、5月5日菌神社の春祭、(3) 5月5日守山市幸津川、下新川神社の春祭を選び、日本調理科学会特別研究の一環として調査した。<br>【結果】(1)では、ドジョウとナマズをタデの入った飯に約7か月間漬けたドジョウのナレズシを西と東の当屋で1桶ずつ仕込み、神饌の膳に盛られていた。境内にもドジョウのナレズシが大皿に盛られ、地元の人々が賞味していた。(2)での神饌は雑魚を約10日間飯と共に漬けた早ずしで、2015年はワカサギが使われていた。御輿や湯立て神事には地域の多くの子どもが参加していた。(3)での神饌はフナズシで、青年二人が古式の包丁式に則り切り分けるので、「すしきり祭り」とも呼ばれていた。今回調査したいずれの春祭でも、神事が済むと、神饌のナレズシを肴に車座になって酒を酌み交わす直会の場が設けられ、地域の交流の場となっていた。また、子どもや若い世代を神事の主役や重要な位置につけることで行事継承の努力がされていた。ナレズシが神事に登場することは、ナレズシが滋賀を代表する象徴的食品であることを示している一方で、ナレズシの伝承のための大きな力となっていると考えられる。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680670034688
  • NII論文ID
    130005489629
  • DOI
    10.11402/ajscs.27.0_134
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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