郷土料理「たらおさ」の実態調査

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タイトル別名
  • The survey on current situation of a local dish “Taraosa”

抄録

【目的】九州北部地方には、真鱈のえらと胃を干した「たらおさ」を甘辛く煮た「たらおさ」という食材と料理名が同じで、旧盆に食べられている郷土料理がある。しかし近年は料理を作る人も知っている人も減少してきている。今回は「たらおさ」に関する研究の一環として、生産と販売状況、生産現場の北海道での認知度、「たらおさ」が食べられるようになったと言われている享保の大飢饉について、明らかにすることを目的とした。<br /><br />【方法】①「たらおさ」の生産されている北海道稚内市の水産加工業者を冬季に訪ね、生産現場を見学した。②稚内市と、日本海に面し北前船が寄港していた小樽市で、認知度について一般市民を対象にアンケート調査を行った。③九州における販売状況については、最も消費されている旧盆の直前に、各県の小売店を対象に電話による調査を行った。④「たらおさ」が食べられるようになったと言われている享保の大飢饉について、文献調査と福岡県の寺等に残る遺跡を調査した。<br /><br />【結果】稚内市の水産加工業者が、根室に水揚げされた真鱈を切り身などに加工している。その時残った鱈のえらと内臓部分を取り出して洗浄した後に、寒風で乾燥させて「たらおさ」にしていた。製品の全量は九州に出荷されていると言われているが、市民の認知度を調査すると、稚内市と、かつて北前船の寄港地であった小樽市の一般市民は「たらおさ」の存在を知らず、地元では全く消費されていないことが判明した。九州における販売状況は、先に行った認知度の結果とほぼ一致しており、北部九州の福岡県と大分県に集中していた。享保の大飢饉は九州地方でも被害は甚大で、記録や、これを祀った遺跡が福岡市を中心とした場所に多く存在した。これらは「たらおさ」が食べられるようになったきっかけに十分なりうると考えられた。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680670252800
  • NII論文ID
    130006032148
  • DOI
    10.11402/ajscs.29.0_124
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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