富士山北西斜面・御庭付近の森林限界移行帯に   おける植生遷移と土壌発達

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  • Plant succession and soil development at forest limit ecotone on the north-west slope around Oniwa of Mt. Fuji

抄録

富士山の森林限界付近では、カラマツが森林限界移行帯を形成し、樹木限界や森林限界は上下に大きく波打っている。今回、調査対象としたのは、北西側5合目の御庭付近に分布する森林限界移行帯の植生である。ここの植生は大きく、シラビソを中心とする亜高山針葉樹林、コメツガの偏形樹林、カラマツの偏形低木林とカラマツ稚樹林、直立したカラマツの若い林の4つに区分できる。演者らはその成立に、御庭付近での火山活動が関わっていることを見出し、噴火の年代と森林との間に、次のような関係のあることを見出した。シラビソを中心とする亜高山針葉樹林は2200年前頃の山頂噴火の影響を受けてできた斜面に成立している。コメツガ偏形樹林は1400−1100年前の御庭・奥庭割れ目噴火によってできた溶岩流上に、偏形したカラマツ低木林とカラマツ稚樹林は、770−610年前ごろの御庭割れ目噴火によってスコリアが噴出した場所に成立している。若く直立したカラマツの林は、現在の土石流の影響を受ける場所に分布。  森林の調査に併せて土壌の調査も行った。 1.土石流が通過し、土砂が堆積する場所では、土壌層位は未分化であった。 2.770−610年前に起こった御庭の割れ目噴火の火口内や火口の縁にあたる、カラマツ幼樹が点在する場所では、L層・F層は見られるが、A層は見られなかった.植生に乏しいスコリアの堆積地という条件下では、600-700年の時間が経過してもA層の生成には至らないのだと考えられる. 同じ770−610年前ごろの御庭割れ目噴火の影響を受けたが,偏形カラマツ低木林になっているところでは、A1層が分化している.しかし亜高山針葉樹林の調査地点と比べると、A1層は薄い。 3.1400-100年前頃の御庭・奥庭の割れ目噴火後に森林の再生が始まったとみられる、変形したコメツガにカラマツの古木を交える林では、A1層・B層まで層位が分化しているものの、A層は薄かった。これはシラビソからなる針葉樹林に比べて、経過した時間が短いためだと考えられる。 4.シラビソ、オオシラビソを主体とする亜高山針葉樹林では厚い土壌の生成が進み、A1層・B層まで層位が分化している.これは2200年前頃から森林の再生が始まった地域で顕著である。 このように噴火の年代の違いが原因となった森林の発達段階の違いは,土壌生成や土壌層位の分化にも大きな差異をもたらしている。 <br>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680671487360
  • NII論文ID
    130005489786
  • DOI
    10.14866/ajg.2015s.0_100107
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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