オーストラリア首都キャンベラにおける中国系住民の社会空間構造

DOI

書誌事項

タイトル別名
  • The Socio-spatial Structure of Chinese Community in Canberra, ACT

抄録

1. はじめに<br> オーストラリアでは近年人口増加が著しい。1996年から2011年の15年間に、人口は21.9%(1830万人から2230万人)増加し、同期間、外国生まれ人口は、41.6%(430万人から600万人)増加している。そのなかでも中国系人口は、15年間に3倍の人口に増え、これはインド(4倍増)に次ぐ増加率である。2012年における中国生まれは,イギリス、ニュージーランド生まれに次ぎ3番目に多く,移民人口の6.5%を占めている。近年の中国生まれ人口の特徴としては、若い世代が増加していることであり、これは留学生と若年層の熟練労働者の移民が増加していることに由来している。本研究では、近年における中国系移民増加による中国系の社会空間構造の変化について、首都キャンベラを事例に考察する。<br><br>2. 中国系移民の多様性<br><br> オーストラリアにおける中国系移民の歴史は19世紀半ばのゴールドラッシュの時期にまで遡る。白豪主義の影響で人口が激減するが1970年代以降増加に転じた。1970年以降増加した中国系移民の多くは香港および広東省出身であったが、近年増加しているのは中国(大陸)出身者である。中国系移民は、広東語を話す香港あるいは広東省出身者と北京語を話す中国大陸出身者におおむね分類され、これら2つのエスニックグループは出身時期が異なるため、居住地も異なる傾向がある。またそれぞれのグループ社会的属性も異なり、中国系コミュニティは重層化しつつある。<br><br>3. キャンベラにおける中国系住民の社会空間構造<br><br> 首都キャンベラは政治機能にきわめて特化した都市であり、官庁や行政機関、各国大使館がキャピタル・ヒルに集積し、またオーストラリア国立大学が立地している。こうした都市機能を背景に、住民は公務員と学生が圧倒的に多く、その特徴は移民の人口構成にもみられる。住民の民族別人口構成についてみると、2011年センサスでは、他の州都において外国生まれの上位3位は、1位イギリス、2位ニュージーランドあるいはインド、3位中国であるのに対し、キャンベラでは1位イギリス(外国生まれの17.6%)、2位中国(同8.3%)、3位インド(6.7%)となっており、他都市とは異なる特徴を持つ。中国系移民は、2006年人口から1.8倍(44,000人から80,000人)に増加しており、こうした状況は中国系住民の居住分布にも反映されている。すなわち、近年開発された北部郊外(Gungahlin)地区に中国系住民が急増しており、市中心部に多く居住する中国系オールドカマーとの居住分化の傾向が顕われ始めている。本報告では、キャンベラの中国系住民の社会空間構造の重層化の様相を探究する。<br>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680672299264
  • NII論文ID
    130005490046
  • DOI
    10.14866/ajg.2015s.0_100341
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ