山陰海岸ジオパークにおけるジオストーリーの再構築

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タイトル別名
  • Rerstructuring of geostory in San'in Kaigan Geopark
  • 湖山池と鳥取砂丘を事例に
  • a case study of lake Koyama and Tottori sand dunes

抄録

本報告は,山陰海岸の湖山池を事例に,ジオストーリーの再構築過程について示し,大地の遺産百選の選定に向けて「ストーリー性」,「ストーリーの多様性」をその基準に加えることを提案するものである.ジオパークにおいてストーリー性およびジオストーリー(大地の物語)の多様性が,ジオサイトの活用において重要なものとなっている.実際,ジオパークで語られるストーリーの時空間スケールは広がってきている.このジオストーリーの時空間的広がりが,ジオサイト間の学習行動ならびに観光行動に結びつき,ジオストーリーを巡る多様な周遊形態を生み出している.山陰海岸ジオパーク(以下,山陰海岸)において地域の認識は、地形地質といった狭義のジオから,広義のジオへと解釈が変化しつつあり,現在,多様な地域性を示すジオストーリーの再構築が行われている.事例とする湖山池でジオパークへの取り組みが本格化したのは,2010年5月以降である.湖山池公園管理事務所に湖山池情報プラザが開設されたことを受け,建物のエントランスに湖山池およびその周辺地域に関する展示パネルを共同で作成した.山陰海岸のジオサイト百選には,湖山池と湖山砂丘が選定されている.パネルの作成過程で,ジオサイト百選に示されている説明をベースとし,湖山池のストーリー形成についての議論を行った.その結果,湖山池では湖山池とその周辺地域にある多様なジオストーリーを構築し,これらをジオツアー等で活用している.さらに,湖山池南東岸で甌穴群と水上飛行機桟橋跡の存在が確認され,現在,調査研究が行われている.この湖山池でのジオストーリー再構築過程において,時空間的な広がりを持たせることができているものの,湖山池およびその周辺地域では環境の改変が大きく,また水環境の問題も抱えていることから,「鑑賞に値する価値(岩松2010)」を持つジオサイトとして認識されているとは言い難い.ゆえに,湖山池そのものを大地の遺産百選の1候補地として推挙することは難しい.一方で,湖山池は広義の鳥取砂丘を構成する一つの要素であり,狭義の鳥取砂丘を補完する地域としての性格を有する.広義の鳥取砂丘を軸としたジオストーリーを構築した場合,湖山池を含む砂丘地の自然環境から人間活動まで多様な展開をみることができ,砂丘地の広がりとその利用形態の多様性を来訪者に伝えることができる大地の遺産となるのではないだろうか.

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680673146752
  • NII論文ID
    130005457189
  • DOI
    10.14866/ajg.2012s.0_100236
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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