年輪ウィグル・マッチングによるドンドコ沢岩屑なだれ発生年代の推定

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タイトル別名
  • High precision age determination of Dondokosawa Debris Avalanche Deposit in east of Mount Jizo using dendro wiggle matching

抄録

[はじめに]赤石山地鳳凰山東麓には岩屑なだれ堆積物(ドンドコ沢岩屑なだれ堆積物=DDAD)が存在する.DDADに関連した木片の年代から岩屑なだれの発生は780−870 ADと推定された.また誘因には豪雨や歴史地震が想定された.しかし通常の14C年-暦年較正では約100年の誤差があるため,岩屑なだれという突発事件と歴史記録とを対照させることは困難だった.この場合,DDADの堆積(発生)年代を限局する手法に樹木ウィグル・マッチング(WM)がある.[調査地域]韮崎市のドンドコ沢・大棚沢沿いである.DDADは地蔵ヶ岳を発生源として標高1100 m付近まで流下した.DDADは大棚沢に堰きとめ湖沼を出現させた.湖沼堆積物に樹幹が含まれる.[方法] 樹皮を残す樹幹(DDKD2)について年輪を数え,最外年輪(1枚目)-5枚目までを分取した.以後11-15枚目・・・81-85枚目まで,10年間隔で9試料を得た.AMS年代測定を実施し,WMは視覚的パターン合わせと,OxCAL4.1+IntCal09による定量解析を行った.[結果] (1)最外部試料(DDKD2−0)は1174±18 BP,最内部試料(DDKD2−80)は1315±18 BPを示した.一方,これらの間の試料は規則的年代配列を示さなかった.(2)視覚的パターン合わせの結果,較正曲線から外れる一部試料を除き,それら以外の年代配列はIntCal09の変動パターンとよく合致した.パターン合わせからDDKD2−0の年代は785-790 AD頃と推定された.(3)全試料について定量解析した結果,DDKD2−0は778−793 ADと算出された.ただし9試料を一括計算すると一部試料について較正曲線との合致性が悪いと警告された.そこで一部試料を除外し再計算した結果,DDKD2−0は778−792 ADとなった.本稿ではこの値をDDKD2枯死年代とする.[考察]  (1)DDKD2が岩屑なだれの発生と同時に運び出され湖沼に漂着堆積したならば,岩屑なだれは778−792 ADに発生したことになる.(2)778−792 ADには歴史地震の記録はない.一方,「続日本紀」には宝亀十年七月(779年9月)に駿河国で洪水が生じたとの記述がある.年代の符号性と本地域が静岡県北部の赤石山地に接する点から,岩屑なだれの誘因はこの時の豪雨だった可能性がある.

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680673303936
  • NII論文ID
    130005456931
  • DOI
    10.14866/ajg.2012s.0_100032
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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