カンボジアkandal州における地表水中ヒ素汚染の実態調査

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タイトル別名
  • Field survey of Arsenic pollution in surface water in Cambodia Kandal Province

抄録

ヒ素汚染された地下水を利用するヒ素問題は世界的に広がっており,この問題はアジア各地で確認されている.地下水中ヒ素に関する研究は数多く行われている一方で,地表水に関する研究事例は少なく未解明な点が多い.カンボジアは上水道普及率が14%,下水道普及率は11%であり,ヒ素を含む地下水が浄化処理されずに利用され,下水処理されずに排水されることが考えられる.そこで,本研究ではカンボジア国の地下水ヒ素汚染が深刻な地域であるKandal州で,地表水中ヒ素に関する実態把握のために2016年1月に現地調査を行った.現地調査は地表水中ヒ素の原因と考えられる,地下水の汲み上げや地下水を利用した後の排水に関する実態把握と地表水中ヒ素濃度の把握を目的とした. <br> 聞き取り調査の結果から,生活用水の水源は乾季雨季のいずれも半数以上の民家が井戸水(地下水)を利用していることが分かった.また,生活排水の排水方法は乾季雨季のどちらも回答は同様で,地表土に排水するか水路に流す事が分かった. Kandal州は地下水中ヒ素濃度が非常に高い地域であるため,生活用水の利用による井戸水の汲み上げに伴い,地下水中のヒ素が多く汲み上げられている可能性があることが確認された.また,生活排水は下水処理されず排水されているため,水路の河川中や氾濫時に地表水中に流入する可能性があることが示唆された.地表水中ヒ素はKandal州の2本のコルマタージュと呼ばれる水路(KC1,KC2)でそれぞれ3地点ずつ観測した.KC1の3地点の平均は5.28±0.41μg/lで,3地点に有意な差はなかった.一方,KC2の3地点の水路終点では地表水中ヒ素濃度が減少したものの,メコン河から氾濫原に向かって地表水中ヒ素濃度は上昇した.最も濃度の高い地点は民家が密集する地点であった.また,KC1沿いの井戸水(地下水)のヒ素濃度は2箇所とも,KC1の地表水中ヒ素濃度の平均よりも高く約4倍または約20倍高かった. <br> 本調査結果から,地下水ヒ素高濃度地域のKandal州で地下水が生活用水のために汲み上げられ,下水処理されずに排水される現状を把握した.また,地表水中ヒ素濃度は人間活動が活発な地点で高い可能性が示唆された.今後は地表水中ヒ素が何に大きく支配されるのか,数値シミュレーションによる感度実験等を実施し検討する.  

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680689399296
  • NII論文ID
    130005176216
  • DOI
    10.11520/jshwr.29.0_94
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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