ウシ黄体細胞におけるアポトーシス抑制因子としての黄体形成ホルモン (LH) の役割

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タイトル別名
  • Anti-apoptotic roles of LH in bovine luteal cells

抄録

【目的】ウシにおいて黄体退行時におこる黄体細胞のアポトーシスは,サイトカインをはじめとする様々なホルモンにより誘導される。黄体形成ホルモン (LH) は黄体におけるプロジェステロン (P4) の合成および分泌に最も重要な調節因子の一つであり,多くの動物種において黄体機能維持因子と考えられている。最近の研究において LH がヒト卵巣上皮細胞のアポトーシスを抑制することが示されているが,ウシ黄体の構造的退行において誘導される黄体細胞のアポトーシスと LH の関係は解明されていない。そこで本研究では,サイトカインによってアポトーシスを誘導した黄体細胞において,LH の影響について検討した。 【方法】ウシ中期黄体より黄体細胞を単離し,12 時間予備培養した。予備培養後,培養液を交換するとともに,腫瘍壊死因子 (TNF; 2.9 nM),interferonγ (IFNG; 2.5 nM),ならびに LH (0.34 nM) を組み合わせて添加し,さらに 24 時間培養を継続した。培養終了後,細胞生存率を WST-1 assay により検討した。また,同様の処理を施した黄体細胞より total RNA を抽出し,FASBAXBCL2CASP8 および CASP3 mRNA 発現を定量的 RT-PCR (real-time PCR) により調べた。さらに,同処理の細胞における caspase-3 活性 についても検討した。 【結果】TNF と IFNG によって黄体細胞の生存率は低下し,この作用は LH によって抑制された (P<0.05)。また,TNF と IFNG はアポトーシス促進因子である FASBAX,および CASP3 mRNA 発現を増加させ,アポトーシス抑制因子である BCL2 mRNA 発現を減少させた (P<0.05)。TNF と IFNG によるこれらの作用は LH により有意に抑制されたが (P<0.05),CASP8 mRNA 発現におよぼす LH の影響は認められなかった。以上の結果から,LH はサイトカインが FAS,BAX,CASP3 を介して誘導する培養ウシ黄体細胞のアポトーシスを抑制することが明らかとなり,黄体機能の維持に関与する可能性が示された。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680691154560
  • NII論文ID
    130007022811
  • DOI
    10.14882/jrds.101.0.540.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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