絵本読み場面における1歳児の情動の表出と理解

書誌事項

タイトル別名
  • Young Children's Understanding of the Emotion and Expressions of Picture Book Characters.
  • エホン ヨミ バメン ニ オケル 1サイジ ノ ジョウドウ ノ ヒョウシュツ ト リカイ

この論文をさがす

抄録

本研究は絵本の登場人物という架空の他者について, l歳代約1年間を通して子どもがその情動を理解していく発達的変化を検討した。「泣き」と「怒り」に焦点化した絵本2冊を材料とし, 4人の子どもを対象に月に約1度の割合で1年間母子による絵本読み場面の観察を行った。 (1) 「泣き絵本」では, 子どもは1歳半ば頃には泣き表情の原因と結果としての安堵, 喜びの情動を認知し, 共感を示す表情変化が見られた。「怒り絵本」では, 共感の表情変化に個人差が大きく見られた。また1歳後半では, 子どもは登場人物の不快な情動より登場人物2名の間のやりとりの面白さに注目することもあった。 (2) 「泣き」は子どもにそれらしい模倣が出現しやすかった。子どもは「泣き」の表現に結ぴついた悲しみの情動に容易に気づくことができると考えられる。これに対し「怒り」は形だけの模倣が多く, 不快の情動より母子間でのコミュニケーションそのものが子どもにとって関心の的となりやすかった。 (3) 4名中3名において, 1歳半ぱ頃から叙述的発話が出現した。多くは登場人物の行動や状況のコメントであるが, 登場人物に対する非難や気持ちの説明も出現した。叙述的発話は登場人物に関する子どもの認知的理解を示すものであり, この認知的理解が登場人物の情動理解を深める可能性がある。1歳代の子どもたちは発達にともない, 登場人物の情動について単なる情動の伝染ではない, 囚果的状況を踏まえた代理的情動反応を示すこと, 認知的理解が進むことが示された。

収録刊行物

  • 発達心理学研究

    発達心理学研究 11 (1), 23-33, 2000

    一般社団法人 日本発達心理学会

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ