「下 先生と遺書」における<追想-叙述>の不可思議な機構について(<特集>近代文学における<他者>)

書誌事項

タイトル別名
  • The Mysterious System of the "Reminiscence and Descriptions" Found in Sensei and His Suicide Note, the 3rd Volume of Kokoro(<Feature Articles>The "Antagonist" in the Modern Literature)
  • 「下 先生と遺書」における<追想--叙述>の不可思議な機構について
  • ゲ センセイ ト イショ ニ オケル ツイソウ ジョジュツ ノ フカシギ ナ

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説明

「こゝろ」の「下 先生と遺書」の、特に叙述の様態について、考察した。Kの自決、殊にも「私」がお嬢さんと結婚して以降(「下・五十一」)の叙述が、ひたすら独白(モノローグ)化して行くのに対して、それ以前、「下・五十」までの叙述は、趣を異にしている。そこには「他者」の「声」がある。だが、若いころの「私」は、それをよく聴き取れたわけではなかった。ではなぜ、現在の「私」は、その叙述の裡に、能く「他者」の「声」を響かせることを得たのか。そこに、追想の問題が生じる。わたしはそれを、<追想-叙述>の機構の不可思議と、名づけてみた。生来の主我主義者(エゴイスト)とも評されるべき「私」が、自身に課せられた制約を乗り超えること、それが、「他者」の「声」に出会うことなのだが、それはいかにして可能だったか。何故というより-である。それを、本文の叙述の様態を考えることを通じて、明らかにしようと、試みた。

収録刊行物

  • 日本文学

    日本文学 37 (10), 1-11, 1988

    日本文学協会

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