環境とメディア:2つの位相 : 食と農をめぐる経験から

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タイトル別名
  • Environment and Media : Two phases
  • カンキョウ ト メディア フタツ ノ イソウ ショク ト ノウ オ メグル ケイケン カラ

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抄録

近年の<食>をめぐる関心は、流通のあり方や生産地である農山漁村に人々の眼差しを向けさせている。その結果、農山村はこれまでの「過疎地」といったイメージに加え、その環境について-食の安全性などとともに-語られることが増えた。これまでの日本の農業は生産力中心主義(「農業の工業化」)のうえで展開してきたとされる。近年、その反省、価値観の転換が、環境意識の高まりと結びつき、産地のありようを積極的に呈示する農業への変化を促したとされる。本稿では、ある果樹の大産地の歴史を、村の人々が経た経験に着目しつつ振りかえり、上記のように通常解釈される過程をあらためて再考しようとする。こうした変化を本稿では、消費主義や情報化が深化していくなかで、農産物が生来的なローカルコンテクストから引き離され、一種のメディア化する過程、または情報的環境とでもいうべきあらたな意味空間が生まれる過程として捉えてみたい。事例紹介に続いて、情報社会論の知見から「メディア」概念について再考したあと、現代社会において、<環境>がふたつの次元-一一つは、コンテクスト型メディアとしての環境、いま一つは、そこにおいて選択される価値の高いコンテンツとしての環境-で大きな存在感をもっていることを指摘する。

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