ブドウ雌ずいに含まれる花粉管生長阻害物質の特性

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タイトル別名
  • Properties of Pollen Tube Growth Inhibitors Extracted from Grape Pistils
  • ブドウ シズイ ニ フクマレル カフンカン セイチョウ ソガイ ブッシツ ノ

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抄録

ブドウの雌ずいには, 花粉の発芽や花粉管伸長を阻害する物質が含まれており, ‘センテニアル’, ‘ピオーネ’などの4倍体品種では‘マスカット•オブ•アレキサンドリア’などの2倍体品種よりその活性が強い. この阻害物質の化学的特性を知るために, これらのブドウの雌ずいまたは花柱と子房を別々に20倍量の水で抽出し, 阻害活性に及ぼす熱処理及びpHの影響や透析及び各種の溶媒に対する溶解性を調査した.<br>1. 各品種の雌ずいの粗抽出液を100°Cの温浴中で10分間加熱処理を行ったが, 花粉管生長に対する阻害活性に変化はなかった. また, カンテン培地上で花粉が正常に発芽するpH5.0~6.0の範囲内では, pHによる活性の強さの差はなかった.<br>2. ‘マスカット•オブ•アレキサンドリア’の子房, ‘ピオーネ’の花柱と子房から抽出された阻害物質のほとんどは透析外液に認められたが, ‘センテニアル’の花柱, 子房中の阻害物質の約半分は透析内液に存在した.<br>3. これらの水抽出液を凍結乾燥し, ヘキサン, 酢酸エチル, エタノール, 水で順に抽出したところ, ‘マスカット•オブ•アレキサンドリア’及び‘ピオーネ’の花柱と子房中の阻害物質は, 一部はヘキサンでも抽出されたが, 大部分はエタノールと水で抽出された. ‘センテニアル’の花柱の阻害物質の大部分は水で抽出されたが,子房中の阻害物質は, 一部はヘキサンや酢ルエチ酸でも抽出され, 大部分はエタノールと水で抽出された.<br>4. 以上の結果から, ブドウの雌ずいに含まれる花粉管生長阻害物質は, 熱及びpHには比較的安定な低分子化合物が主体で, 一部は脂溶性であるが, 大部分は親水性の高いものである. しかし, ‘センテニアル’では高分子化合物も花粉管の生長阻害に関与していると思われる.

収録刊行物

  • 園芸学会雑誌

    園芸学会雑誌 58 (3), 523-528, 1989

    一般社団法人 園芸学会

被引用文献 (2)*注記

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参考文献 (3)*注記

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