北海道十勝管内耕地土壌の炭素賦存量とその動態

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タイトル別名
  • Soil carbon storage and its dynamics in agricultural land in the Tokachi district of Hokkaido
  • ホッカイドウ トカチ カンナイ コウチ ドジョウ ノ タンソフゾンリョウ ト ソノ ドウタイ

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抄録

十勝管内の農耕地表層1mの土壌炭素賦存量を1965年〜1975年に刊行された地力保全基本調査成績書を基に37Tgと見積もった.この中で多湿黒ボク土は,面積割合が17%(39千ha)であるが,炭素賦存量は31%(12Tg)を占めた.土壌炭素の動態を明らかにするために主要3土壌である黒ボク土,多湿黒ボク土,褐色低地土の裸地条件で二酸化炭素発生速度を6月から10月まで4時期,延べ7回測定した.同一地点で深度5cmの地温を1時間ごとに連続128日間記録した.土壌別の二酸化炭素発生速度の平均値(SD)は,多湿黒ボク土は76.7(31.6)mg-C m^<-2>h^<-1>で黒ボク土の43.2(16.9)mg-C m^<-2>h^<-1>より有意に高かった.二酸化炭素発生速度と5cm地温との間には有意な正の指数的相関が認められた.地温の連続データから算出した6〜10月(128日間)の二酸化炭素発生量は,黒ボク土1.19Mg-C ha^<-1>,多湿黒ボク土2.37Mg-C ha^<-1>であった.黒ボク土に対する多湿黒ボク土の二酸化炭素発生量の比を圃場における7回の実測値から算出すると1.77となり1969年の十勝農業試験場の測定結果0.84と比較して,2007年の1.77が有意に高い値となった.このように過去と比較して多湿黒ボク土の二酸化炭素発生速度の黒ボク土に対する比が高まった要因として,この38年間の作土の水分含有率変化から排水改良による土壌の乾燥化が考えられた.以上,十勝管内の耕地における多湿黒ボク土は大きな炭素プールであることが明らかとなったが,同時に,生産性向上を目的に実施されてきた排水改良事業が効果を上げ,特に排水改良効果の出やすい土壌タイプの容水量過大型多湿黒ボク土は,排水効果の発現による土壌の水分率低下により有機物分解速度が促進されたと考えられる.今後は,この大きな炭素プールの動態に注目してゆく必要がある.

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