2011年の福島第一原子力発電所事故で放出された放射性セシウムの野生ゼンマイ(<i>Osmunda japonica</i>)の葉への移行

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タイトル別名
  • The transfer of radiocesium released in the 2011 Fukushima Daiichi Nuclear Power Station accident to leaves of wild <i>Osmunda japonica</i>, an edible fern
  • 2011年の福島第一原子力発電所事故で放出された放射性セシウムの野生ゼンマイ(Osmunda japonica)の葉への移行
  • 2011ネン ノ フクシマ ダイイチ ゲンシリョク ハツデンショ ジコ デ ホウシュツ サレタ ホウシャセイ セシウム ノ ヤセイ ゼンマイ(Osmunda japonica)ノ ハ エ ノ イコウ

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抄録

2011年3月の東京電力福島第一原子力発電所事故以降、高レベルの放射性セシウム(134+137Cs) が検出された10種以上の日本の野生山菜に出荷制限が課されている(2017年7月31日)。しかし、環境から野生山菜への放射性セシウムの移行やそれに影響を及ぼす要因を調べた研究がほとんどなく、出荷制限が維持されるべきかどうかの判断に利用できる情報は限られている。福島県郡山市の131地点で野生のゼンマイ(Osmunda japonica) の葉を2015年7月と8月に採取し、137Cs の野生山菜への移行に影響を及ぼす可能性のある環境要因を調べた。重回帰分析によると、ゼンマイの葉の137Cs 濃度は生育地のリター中の137Cs 量、空間線量率、上層木の被覆率、リターの被覆率と有意な関係があった。後3者をパラメータに用い、ゼンマイの葉の137Cs濃度を予測するモデルを100地点の検体を用いて構築し、残りの31地点の検体で検証した。予測の結果は系統誤差が小さく、モデルの正確さ(accuracy) は高かった。しかし、予測値は観測値の約 1/5 ~ 5倍の間に分布しており、モデルの精度(precision) は低かった。測定値と予測値の残差平方和が大きいため、生育環境に関する上記の3つの情報を利用しても、出荷制限を解除するために必要な検体数を現行の目安(60) から減らすことはできないと考えられた。植物季節の違いが、今回観察されたゼンマイの葉における137Cs 濃度の変動に関与している可能性がある。今後の研究では、このような大きな変動を引き起こすメカニズムを明らかにする必要がある。

収録刊行物

  • 森林総合研究所研究報告

    森林総合研究所研究報告 17 (3), 217-232, 2018

    国立研究開発法人森林研究・整備機構 森林総合研究所

被引用文献 (1)*注記

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