バイカル湖湖底堆積物の花粉分析に基づく南東シベリアにおける酸素同位体ステージ11の植生および気候変遷

書誌事項

タイトル別名
  • Vegetation and climate changes during MIS 11 in southeastern Siberia based on pollen records from Lake Baikal sediment

この論文をさがす

抄録

バイカル湖のアカデミシャンリッジおよびポソルスカヤバンクから掘削されたコアの花粉分析を行い,今後の気候を予測する際のアナログになりうると考えられている酸素同位体ステージ(MIS)11を含む45〜35万年前のバイカル湖北部および南部地域における植生および気候変遷を明らかにした。MIS12の後期では,バイカル湖周辺はヨモギ属やアカザ科などの草本主体の植生が広がっていたが,北部地域は山岳氷河が大規模に発達しなかったため,マツ属およびトウヒ属の針葉樹が小規模に分布を拡大できたと考えられる。MIS11.3では,両地域がマツ属やトウヒ属などの針葉樹林に広く覆われ,北部地域はカラマツ属を,南部地域はモミ属を多く伴っていた。MIS11.3以降では,山岳氷河の拡大によって北部地域は植生が貧弱だった。それに対して,南部地域は多くの時期でハンノキ属やカバノキ属などの広葉樹低木の混じる草原植生が広がっていたが,MIS11.23およびMIS11.1に対比される針葉樹林の短期的な拡大期が確認された。バイカル湖地域におけるMIS11以降の間氷期と比較して,MIS11.3における針葉樹林の拡大は最も長い3.3万年以上であった。また,MIS1に比べてモミ属や五葉マツ属の産出が多かったことは,MIS11.3において温暖で湿潤な気候が長期にわたって持続していたことを示唆している。南ヨーロッパ地域と比較して,バイカル湖地域におけるMIS11.3の森林の拡大期はやや長かったと考えられる。また,バイカル湖地域において森林植生の変化が少なかったことは,MIS11.3においてバイカル湖地域の環境が南ヨーロッパ周辺と比較して安定していたことを示唆している。

収録刊行物

参考文献 (35)*注記

もっと見る

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ