大学生の進路選択と就職活動

書誌事項

タイトル別名
  • Job-Hunting and Career Selection by University Students
  • ダイガクセイ ノ シンロ センタク ト シュウショク カツドウ

この論文をさがす

抄録

<p> 大学進学者が増加する中で非選抜的な大学が増加し,こうした大学で特に卒業後無業やフリーターになる学生が多いとされるが,そこに特徴的な就職活動のプロセスやキャリア形成支援の状況について,大規模な調査を基にした検討はされていない.本稿では,多くの大学(276校)の協力下で行われた大学4年次の学生調査,及び全国の大学就職指導・キャリア支援部門調査,さらに,1990年代に行われた大規模調査の再分析を基に,大学生の就職活動と大学のキャリア支援について,非銘柄大学の学生を中心に,過去からの変化を組み込んだ分析を行い,次の3つの知見を得た.第1に,非銘柄大学の学生は就職活動開始が遅く,応募する会社数を絞る傾向が見られた.1995年の卒業者でも非銘柄大学卒では接触する企業数が少ないが,日程は現在ほどの開きはなく,ほぼ卒業1年前から就職活動を始める慣行が大学の選抜性を問わず共有されていた.この間,銘柄大学の学生により早くという前倒しのプレッシャーがかかり続けてきたのではないかと思われる.第2に,大学の就職支援・キャリア形成支援はすでに多くの大学で教員とも連携を持って取り組まれていたが,非銘柄大学の学生のほうがより支援を活用する傾向があった.また,その活用には就職率を高める効果が推測された.非銘柄大学の学生のほうがより支援を活用する傾向は95年卒業者でも見られたが,現在より利用度は低かった.背景に,学生の「生徒化」の進行があると考えられる.第3に,非銘柄大学の学生の就職活動のプロセスの検討からは,大企業就職に価値を置く労働市場からの乖離がみられた.本人の就職活動への満足感を新たな市場の価値と考え,これを高める就職支援を検討した.そこからは大学による支援の力点の違いが指摘できるとともに,共通のものとして,就職への意識を喚起して活動開始を促す支援と大学生活を充実させ,成績を向上させることの重要性が明らかになった.</p>

収録刊行物

  • 高等教育研究

    高等教育研究 11 (0), 85-105, 2008-05-26

    日本高等教育学会

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ