食品加工のさいにおこる蛋白質中の有効性リジンの損失に関する研究

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  • 稲神 馨
    九州大学農学部食糧化学工学科栄養化学教室
  • 堀井 正治
    九州大学農学部食糧化学工学科栄養化学教室

書誌事項

タイトル別名
  • Change of available lysine in food protein by heating and smoking
  • ショクヒン カコウ ノ サイ ニ オコル タンパクシツ チュウ ノ ユウコウセイ リジン ノ ソンシツ ニ カンスル ケンキュウ

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抄録

蛋白質中のリジンは糖などと反応して栄養的に無価値なものに変わり易いので,食品加工面から蛋白質中のリジンの損失について検討を加えた. 1) 蛋白質を単独で加熱しても蛋白質の有効性リジンは減少するが,糖が存在するとその程度は著しくなる.そしてリジンの損失には二つの機作が考えられた.一つは蛋白質を単独加熱したときおこるもので,他は糖などが関与する反応である. 2) 有効性リジンの減少度は処理時のpHと関係があり,アルカリ側で減少が甚だしい.また加熱温度が高くなる程多く損失した.そして共存する糖の量が多くなる程減少度は大きくなるが,ある量に達すると一定になつた.その量は処理条件で異なつていた. 3) 食品中に含まれる物質,添加されるもの,または加工工程中に発生すると思われる物質であるascorbic acid, erythorbic acid, acetaldehyde, furfura1などの共存は蛋白質の有効性リジンを減少させた.その作用は酸性では弱いが,アルカリ側では強いので,この点を食品加工面で考慮すべきである. 4) 蛋白質とフルフラールが反応するとき前もつて食品添加剤ポリリン酸塩またはsorbitan fatty acid esterを添加しておくとリジンの損失を防止した.5)燻煙加工によつて羊肉中の有効性リジン量は著しく減少した.処理前には有効性リジンが肉1g当り34.6mgあつたものが,処理後には23.6mgに減少した.即ちリジンの約32%が損失した.

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