野菜類の調理前の殺菌操作における成分変化および残存塩素量

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抄録

<p>(緒 言)</p><p> 日本食品標準成分表1)の野菜「生」の試料は,販売されている状態の野菜を洗浄せず,拭いただけの食品である.一方,通常,サラダ等の生野菜は衛生のために洗浄し,給食では,大量調理施設衛生管理マニュアル2)指定の殺菌操作を行う.</p><p> 調理操作においては,食品からのビタミンやミネラルの損失3),調理に使用する水に含まれる無機質4)が食品へ移行することも知られている5).殺菌操作では,水に浸漬する操作が含まれているため,このような操作で無機質等の成分が溶出または付着することが想定される.</p><p> そこで,本研究では,常用するこれらの食品の,殺菌操作(洗浄も含む)における主要な成分及び塩素量を明らかにすることを目的とした.</p><p>(研究方法)</p><p> 試料は,生野菜として利用されることが多い,きゅうり(丸),ミニトマト(丸),キャベツ(1/2カット),キャベツ(千切り)とした.洗浄は,ボール+ザルに試料を入れ,流水10分→水切りを行った.その後,①洗浄のみ:10分間放置,②水道水:水道水に浸漬10分→流水10分,③200ppm:次亜塩素酸ナトリウム200ppm溶液に浸漬5分→流水10分,④100ppm:次亜塩素酸ナトリウム100ppm溶液に浸漬10分→流水10分の操作を実施した.なお,使用した水は,本学の水道水とした.</p><p> 分析は,重量及び水分を常法で,次亜塩素酸ナトリウム(Cl2),カリウム(K),カルシウム(Ca),マグネシウム(Mg)およびアスコルビン酸(VC)はRQフレックスを用いて測定した.</p><p>(結果)</p><p> ①洗浄のみの結果を100%として②③④の数値を比較すると,重量変化率は,きゅうりおよびミニトマトで1%以内の増加,キャベツ1/2とキャベツ千切りは5%程度増加した.水分含有量は,すべての野菜で,±1%程度であった.</p><p> 栄養素も同様に成分残存(変化)率を算出して比較すると,Kは,増加:きゅうり②③④24~30%,キャベツ1/2②③④3~7%,減少:ミニトマト①-5%,キャベツ千切り②③④約-30%であった.Caは,増加:キャベツ1/2②③④18~27%,キャベツ千切り②③④17~21%,減少:きゅうり③④約-5%,ミニトマト②③④約-20%であった.Mgは,増加:キャベツ千切り②③約3%,減少:きゅうり③④約-6%,キャベツ1/2③④-3~6%であった.VCは,増加:きゅうり②③④2~6%,キャベツ1/2②④約10%,減少:ミニトマト③④-7~9%,キャベツ千切り③④-5~8%であった.</p><p> Cl2は,きゅうり③で約15%の増加がみられた.きゅうり以外はすべてCl2測定限界以下となった.</p><p>(考察)</p><p> 栄養素の増減は,野菜の組織や切り方の相違および水切り(ザルで水を切る)による食品の周囲に付着した溶液量の差等が考えられる.しかし,今回の実験では,次亜塩素酸ナトリウムの使用の有無,濃度の違いによる重量及び成分残存率の差は,特に見られなかった.</p><p> Cl2は,きゅうり以外はすべてCl2測定限界以下となった.しかし,それぞれ消毒操作が終了し水切りをした時点では,特に③のサンプルで他と比べて塩素臭があったことから,サンプル溶液調製の間にCl2が分解され減少したと考えられた.</p><p> 以上の結果から,生野菜の栄養成分は野菜の種類や洗浄方法により損失する成分や損失量が異なること,また,付着する水道水から栄養素が増加するととがわかった.また,塩素消毒は,濃度100ppmで消毒後に水切りを丁寧に行うこと,塩素臭が減少するようにすぐに提供をしない工夫をすると,安全で嗜好評価の高い生野菜が提供できるのではないかと考えられた.</p>

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