岡山県倉敷市の畦畔および休耕田におけるナゴヤダルマガエルの選好環境

書誌事項

タイトル別名
  • Habitat preference of the endangered Nagoya Daruma Pond Frog (<i>Pelophylax porosus brevipodus</i>) in paddy levees and fallow paddy fields of Kurashiki, Okayama, western Japan.

抄録

<p> 活動期のナゴヤダルマガエルによる畦畔と休耕田の利用状況を明らかにすることを目的とし,2017年7~11月に野外調査を実施した.岡山県倉敷市内の調査地に23地点の調査地点を設定し,調査地の水田の農事暦を踏まえて,「中干し前」,「中干し中」,「中干し後」,「稲刈り前」,「稲刈り後」の5期間でナゴヤダルマガエルの定量的な捕獲調査および物理環境調査を行った.畦畔については,ナゴヤダルマガエルの選好環境を検討するため,調査地点内で本種が確認された「中干し中」から「稲刈り前」の期間のデータを対象とし,ナゴヤダルマガエルの個体数を目的変数,各物理環境要因と調査時期を説明変数として一般化線形モデルを用いた解析を行った.</p><p> 調査で確認されたナゴヤダルマガエルの合計個体数は,畦畔では「中干し前」の個体数が最も多く,その後は「稲刈り後」まで減少傾向が続いた.全捕獲個体数(139個体)の93%を占める129個体が,植被率60%以上の畦畔で確認された.一方,休耕田の全調査地点での合計個体数については「中干し前」で最も多く,「中干し後」までは減少したが,「稲刈り前」に個体数が増加し,その後は「稲刈り後」に減少した.一般化線形モデルを用いた解析の結果,ナゴヤダルマガエルの個体数に対してカバー率と被覆型植物(表土を覆う面積が大きく,地表面を這うように生育する植物)の植被率に有意な正の効果が認められ,その効果は被覆型植物の植被率で高かった.</p><p> 以上の結果から,ナゴヤダルマガエルは畦畔に加えて休耕田も生息場所として利用するが,畦畔と休耕田では生息場所としての利用状況が農事歴に応じて異なっていることが明らかとなった.また,ナゴヤダルマガエルの保全においては,植被率60%以上の畦畔を維持することが重要と考えられた.</p>

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