甘藷焼酎醸造工程中の葉酸含量の推移

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タイトル別名
  • Changes in folate level during sweet potato shochu production
  • カンイモジョウチュウ ジョウゾウ コウテイ チュウ ノ ヨウサン ガンリョウ ノ スイイ

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抄録

我々は焼酎粕には葉酸が豊富に含まれることを以前報告した。しかし,焼酎粕の葉酸の由来は明らかになっていなかった。そこで,甘藷製焼酎粕中の葉酸の高含有要因を調べるため,パイロットスケールでの甘藷焼酎醸造試験を実施し,各醸造工程における葉酸の含量の推移を調べた。試料100 g(乾燥重量)中に原料白米では24.4 μg,米麹では31.1 μg,原料甘藷中では187.9 μgの葉酸が含まれていたが,これらは全て5-MTHFであった。発酵・蒸留工程での葉酸の含量を調べたところ,THFは原料米及び米麹には含まれず酵母によって生産されるが,蒸留により大部分は消失すること,一方,5-MTHFは原料米及び甘藷に含まれるとともに,製麹工程中に麹菌によって生成され,さらに発酵工程中に酵母により生産されるが,蒸留により一部減少することが明らかとなった。2次もろみ発酵終了時点での葉酸の総量を100とした場合の各工程の寄与を調べると,2次もろみの仕込みに使用した蒸きょうした甘藷が46.4,2次もろみ発酵中の酵母による生成が44.1と大きく,焼酎粕の葉酸の大部分は甘藷及び酵母による生成に由来することがわかった。一方,蒸留によって36%減少することが判明した。さらに,焼酎粕の貯蔵試験において,焼酎粕の嫌気処理及びケーキの凍結乾燥により貯蔵中の5-MTHFの減少が抑制されることで,葉酸の貯蔵安定性が向上することが明らかとなった。これらの成果は,焼酎粕の有効利用や付加価値の向上につながるものと期待される。

収録刊行物

  • 日本醸造協会誌

    日本醸造協会誌 113 (2), 115-122, 2018

    公益財団法人 日本醸造協会

被引用文献 (1)*注記

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参考文献 (5)*注記

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