多発肝細胞腺腫対して生体肝移植を施行した糖原病Ia型の1例

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<p>【はじめに】糖原病Ia型はグルコース-6-ホスファターゼ欠損により引き起こされる。低血糖発作や乳酸アシドーシスの管理に難渋する症例や、高頻度に出現する肝細胞腺腫が増大傾向にあり悪性化が懸念される症例では肝移植が適応とされるが、本邦での本疾患への肝移植施行例は数例のみである。</p><p>【症例】8歳女児。生後10か月時に発達の遅れと肝腫大を指摘され当院小児科紹介となった。精査にて糖原病Ia型と診断され、服薬・食事療法で加療されていた。次第に内科的コントロールが不良になり、また肝細胞腺腫が多発し一部に増大傾向を認めるため肝移植の適応と診断し、血液型適合の父から左葉グラフト(グラフト重量290g、GRWR 1.17%、GV/SLV 48.8%)を移植した。肝移植時の身長108.5cm(-3.3SD)、体重23.5kg(-0.5SD)、標準肝容量(SLV)582.7mlであったが、摘出肝は黄色調で2012gと著明な腫大を認めた。 摘出肝の病理診断で両葉に多数の結節病変を認め、炎症性肝細胞腺腫と診断されたが、悪性所見は認めず、肝細胞癌は否定された。グラフト再灌流直後から血糖が安定化し、術後も低血糖発作を認めることなく食事制限は解除することができ、移植後35日目に自宅退院した。現在移植後3か月経過し拒絶反応を認めず、現在外来にて管理継続中である。</p><p>【まとめ】肝移植後の経過は良好であり、内科的コントロールが不良な症例や多発増大傾向のある肝細胞腺腫を認める症例には肝移植を検討すべきである。</p>

収録刊行物

  • 移植

    移植 58 (Supplement), s321_3-s321_3, 2023

    一般社団法人 日本移植学会

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