変容的経験の悪しき推奨

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抄録

本論文では、マジョリティからマイノリティに対する「やってみなければわからない」という変容的経験の推奨を控える道徳的理由があることを示す。変容的経験とは、その経験をする前の時点からは、その経験がどのような特徴を持つのかわからず(認識的変容)、またその経験をすることで個人の選好体系や価値づけが変わってしまうために経験する前の時点で評価することができない(個人的変容)、という特徴を持つ経験のことである。このような変容的経験の一部、例えば親になること・子を持つこと、性的経験などは社会的に価値づけられている。こうした肯定的に価値づけられた変容的経験は、その経験をしたマジョリティから、その経験をしてないマイノリティに対して推奨されることがある。本論文では、このような推奨がさしあたり道徳的に悪い推奨であることを2 つの観点から示す。第一に、認知バイアスを持っているがゆえに自身の経験に関して信頼できない推奨になってしまう。第二に、推奨者が適応的選好をもっているために、その選好を持つ前である被推奨者にとって良い理由を示せない。もしこれらが正しければ、変容的経験の推奨は、被推奨者にとって良い理由を示すことに失敗するがゆえに、さしあたり控える理由がある。

収録刊行物

  • 応用倫理

    応用倫理 15 33-45, 2024-03-31

    北海道大学大学院文学研究院応用倫理・応用哲学研究教育センター

キーワード

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390299981562951936
  • DOI
    10.14943/ouyourin.15.33
  • HANDLE
    2115/92031
  • ISSN
    18830110
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • IRDB
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用可

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