セントラルドグマを体感する高等学校生物実験の開発と実践

  • 片山 豪
    群馬県立渋川女子高等学校 愛媛大学無細胞生命科学工学研究センター
  • 林 秀則
    愛媛大学無細胞生命科学工学研究センター 愛媛大学大学院理工学研究科
  • 高井 和幸
    愛媛大学無細胞生命科学工学研究センター 愛媛大学大学院理工学研究科
  • 遠藤 弥重太
    愛媛大学無細胞生命科学工学研究センター 愛媛大学大学院理工学研究科

書誌事項

タイトル別名
  • Development of an Educational Material for Teaching “Central Dogma” in the High School Biology -Visualization of Transcription and Translation Process Reconstituted in a Test Tube-
  • セントラルドグマを体感する高等学校生物実験の開発と実践 : コムギ胚芽無細胞タンパク質合成系を用いて転写,翻訳を可視化する
  • セントラルドグマ オ タイカン スル コウトウ ガッコウ セイブツ ジッケン ノ カイハツ ト ジッセン : コムギハイガ ムサイボウ タンパクシツ ゴウセイケイ オ モチイテ テンシャ,ホンヤク オ カシカ スル
  • ―コムギ胚芽無細胞タンパク質合成系を用いて転写,翻訳を可視化する―

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説明

<p>高等学校現行教育課程では,生命科学の中心教義であるセントラルドグマに関しては,生物学の基礎課程である「生物Ⅰ」ではなく,応用課程の「生物Ⅱ」を選択した一部の生徒が学習するだけである.来年度から実施される教育課程では,多くの生徒が1,2年次に履修する「生物基礎」の最初の章で学習することになる.そこで,新学習指導要領に適した実験を考案するために,コムギ胚芽を原料とする無細胞タンパク質合成法に注目し,セントラルドグマを可視化する安全で簡便な教育教材の開発を試みた.セントラルドグマとは,DNAの遺伝情報がmRNAに転写され,これを鋳型としてアミノ酸を連結して遺伝子情報をタンパク質に翻訳する過程のことである.これまでの教育教材としては大腸菌を培養する組換え法が用いられてきたが,本教材では生細胞を用いることなく試験管の中で,転写および翻訳産物を呈色や蛍光発色で可視化し直接的に観察することを特徴とする.遺伝子発現の転写は,コムギ胚芽無細胞タンパク質合成系発現専用ベクター(pEU)に組み込んだ緑色蛍光タンパク質遺伝子gfpを鋳型として,SP6ポリメラーゼを用いて試験管内で行われた.mRNAの合成は,アガロースに包埋した転写反応液をメチルグリーンピロニンによる染色または,RiboGreen試薬による蛍光染色によって確認することができた.翻訳は,合成したmRNAを鋳型として,コムギ胚芽無細胞タンパク質合成系を用いたGFPの合成により行われた.GFPの合成はブラックライトによる励起による緑色蛍光発光から容易に確認できた.このように,セントラルドグマを可視化する簡便な実験教材を考案することできた.そこで,現行教育課程の「生物Ⅱ」を履修する生徒を対象に本教材を用いた授業を試みたところ,セントラルドグマに関する高い理解度が得られることを確認することができた. 以上の結果から,バイオハザードと生命倫理問題をもクリアーした簡便な本実験法が,中心教義教育用の新しい教育教材として有用であると考えた.</p>

収録刊行物

  • 生物教育

    生物教育 52 (4), 165-178, 2012

    一般社団法人 日本生物教育学会

参考文献 (8)*注記

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