気管内投与及び吸入曝露における硫酸の急性吸入毒性の比較

書誌事項

タイトル別名
  • Comparison of acute inhalation toxicity of sulfuric acid between intratracheal instillation and whole-body inhalation

説明

<p>【目的】</p><p>産業衛生の観点から化学物質の吸入毒性を把握することは重要である。一方、一般的な吸入毒性試験法である吸入曝露試験は実施可能な施設が限られ、大きなコストを要するため、全ての化学物質を評価することは不可能である。近年、吸入曝露試験の代替として、簡便で安価に実施できる気管内投与法が注目されている。今回、吸入時に呼吸器系に障害を与えると考えられる酸性物質について、吸入曝露と気管内投与における急性吸入毒性を比較する目的で、その代表例である硫酸を用いた気管内投与試験を実施した。</p><p>【方法】</p><p>7週齢の雄性Crl:CD(SD)系ラットを用い、硫酸を総投与量で0、0.7、2、7、20及び60 mg/kgとなるように4回(1回/時間)に分けて各群5匹に投与した。投与後14日まで、死亡/症状観察、体重測定を行い、観察期間終了後に肉眼的病理検査及び病理組織学的検査を行った。また、概算の半数致死量(LD50)を算出した。</p><p>【結果・考察】</p><p>20及び60 mg/kg群では全匹、2 mg/kg群では1匹で、投与直後より自発運動減少などを示し、投与後4時間以内に死亡した。その他の動物では死亡/症状は認められなかった。病理学的検査において、20及び60 mg/kg群では、肉眼的に肺において多発性あるいはび漫性に赤色領域が認められ、これら領域は病理組織学的には細気管支の粘膜上皮基底部における空胞形成及び肺胞上皮の壊死が認められた。これら群の死亡は被験物質の肺への傷害に起因したものと考えられた。一方、その他の動物では、肺に著変は認められなかった。以上の結果より、硫酸のラットにおける気管内投与によるLD50は、7 mg/kg以上20 mg/kg未満と推察された。硫酸の吸入曝露の半数致死濃度における曝露量は43.2 mg/kgであったことから、気管内投与は吸入曝露よりも2倍以上強く吸入毒性を示すものと考えられた。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390567172568273792
  • NII論文ID
    130007898435
  • DOI
    10.14869/toxpt.47.1.0_p-224
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ