「一時的な楽しみ」がもたらす真正な観光経験

書誌事項

タイトル別名
  • Tourist Experiences of Folk Performing Arts Workshops:
  • 「一時的な楽しみ」がもたらす真正な観光経験 : 新潟県佐渡島の民俗芸能・鬼太鼓を通じた体験・交流プログラム
  • 「 イチジテキ ナ タノシミ 」 ガ モタラス シン セイ ナ カンコウ ケイケン : ニイガタケン サドガシマ ノ ミンゾク ゲイノウ ・ オニ ダイコ オ ツウジタ タイケン ・ コウリュウ プログラム
  • A Case Study of <i>Onidaiko</i> and Takachi Performing Arts Festival on Sado Island, Niigata
  • 新潟県佐渡島の民俗芸能・鬼太鼓を通じた体験・交流プログラム

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説明

本稿では、新潟県佐渡島の伝統芸能・鬼太鼓を事例に、民俗芸能を介した体験・交流プログラムにおける観光経験について考察する。佐渡島は全国的な知名度を誇る民謡・佐渡おけさや能、世界的太鼓集団「鼓童」の存在によって「芸能の島」とも称されている。そのなかで鬼太鼓は、全島の集落で広く伝承されている芸能であり、佐渡の観光宣伝の文脈では戦前から島を代表する伝統文化として位置づけられてきた。佐渡市高千地区では、毎年8月13日に「夏の彩典たかち芸能祭」というイベントが行われている。このイベントでは2009年より神奈川県の大学生が参加する芸能体験プログラムが行われており、学生たちは約1週間高千地区に滞在し、集落に伝わる鬼太鼓を学び芸能祭本番では伝承者とともに観衆に向けて披露する。このプログラムを対象に筆者が2009年以来行ってきたアクション・リサーチから明らかになったのは、民俗芸能という身体技法の習得をともなう交流プログラムにおいては、束の間の「師匠と弟子」の関係が構築されるということである。さらに参加学生が伝承者とともに鬼太鼓を披露して地域の人々や観光客に「観られる」側となる状況では、「地域文化観光」論で指摘されているような真摯な交流がもたらされ、観光者としての参加者が実存的真正性を経験することが可能になる。だが同時に重要なのは、そのような真正な経験が、このプログラムが管理された団体旅行であり、受け入れる地域と参加する学生にとって「一時的な楽しみ」であることによって支えられているという点である。

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