ヒラリー・パトナムの実在論の変遷と真理の概念

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タイトル別名
  • Hilary Putnamʼs Changes in Realism and the Concept of Truth
  • ヒラリー ・ パトナム ノ ジツザイロン ノ ヘンセン ト シンリ ノ ガイネン

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抄録

 知識の文脈主義によれば、「私は、自分に手があることを知らない」という言明は、懐疑論者による高いレベルの認識基準に基づいて主張されているならば、その文脈において真である。一方、その言明は、日常会話での低いレベルの認識基準に基づいて主張されているなら偽である。つまり、真理は、言明の発話の文脈に相対的である。本論文では、この文脈主義を評価する準備段階として、ヒラリー・パトナムの実在論をめぐる議論に着目する。パトナムは、長年にわたって実在論との関わりの中で真理について論じてきており、自らの考え方を、形而上学的実在論から内在的実在論を経て自然な実在論へと変化させている。特に、自然な実在論は重要である。パトナムは、「自然な実在論」を、「普通人の自然な実在論」あるいは「常識実在論」と言い換えている。すなわち、自然な実在論は、私たちの日常言語の視点からの実在論であり、この実在論との関わりの中で真理についての考察がなされているのである。こうした点から、文脈主義について考察する前に、実在論と真理についてのパトナムの議論を参照することには意味がある。そこで、本研究では、第1に、パトナムの実在論の変遷をたどることによって、パトナムが実在論を変化させていった動機、この変遷において暗黙のうちに前提されている視点、そして自然な実在論から学ぶべき点を明らかにしている。第2に、パトナムの考察に基づいて、日常言語の側面から真理に関して何が言えるかについて述べている。

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