資源回復計画の位置づけと課題:制度経済学的コモンズ論の視点から

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タイトル別名
  • The institutional nature and issues of the Resource Recovery Plan: From the institutional economics viewpoint of the Commons theory
  • シゲン カイフク ケイカク ノ イチズケ ト カダイ セイド ケイザイガクテキ コモンズロン ノ シテン カラ

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抄録

<p>制度経済学とは,法学と経済学の手法を利用して制度に関する研究を試みる学問であり,経済活動における人と人との関係に重点を置く。そこでは制度の効用は,取引費用を節約し,インセンティブ・メカニズムを提供すると共に外部効果を抑え,協力の条件を作り出すことにある。水産資源は1) Subtractability(あるいは競合性)があり, 2)潜在的利用者を排除するのにコストがかかる,という二つの性格を有する資源である。これを共有資源(Common Pool Resources: CPR)として定義し,その持続的・効率的利用を可能とする制度の性格,制度自体の持続性,柔軟性,公平性等を考察するアプローチを,本稿では制度経済学的コモンズ論とする。本稿では資源回復計画を共有資源管理制度の一つとして位置づけ,コモンズ論のアプローチに基づく解釈を試みた。</p><p>資源回復計画制度は,我国の資源管理型漁業の手法を国家政策として推進するものである。漁業者協定制度を導入し,広域漁業調整委員会の設置により広域資源分布,県間・大臣―知事許可など漁業種類間調整への対応を可能としている。また資源回復目標(数値目標)の設定とTAEの導入により,科学的根拠と検証可能性が明確となる。さらに各種の支援措置(予算措置)により,漁家経営への影響も勘案されている。この新制度により,国による広域で強力な執行や,明確な管理目標による説明責任の明確化が可能となり,漁業者協議会からのボトムアップと,その国家による公的な執行体制が組まれた。</p><p>今後の課題として,ここでは資源回復・市場条件・資金調達の三つを挙げる。水産資源の持続的利用に関する国及び漁業の責務として,資源回復目標と計画の意思決定・執行における一層の透明性・科学性の確保や,対象漁業種の構造改善(中核的漁業者の育成),順応的管理の視点が重要である。また,資源が回復したときにどのような需要があるのかという間題は,計画が漁家経営へ与える影響を根本的に規定し,水産物の安定的な供給の確保に関わる間題である。市場条件を見据えた管理計画が策定されるべきである。最後に資金調達は,支援措置資金を誰が負担するのかという問題である。各計画(5カ年)の終了後も見据え,計画遵守のインセンティブ構造も踏まえた考察が必要である。他の計画対象種・漁業種も含めた包括的な資金調達のための理論構築が求められる。</p>

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